橋下 僕は夫婦別姓やLGBTを否定する類の人間のように思われることが多いですが、そんなことないんですよ。たとえば夫婦別姓は、選択制だし、否定する理由ないもんね。やりたい人がやって、やりたくない人はやらなければいいんだから。今、政治のふがいなさにしびれを切らして裁判で実現しようとしている人も出てきましたが、あれは政治でやろうと決める話だと思います。しかし自民党は反対でしょうし、維新の会も個人の価値観で嫌がるメンバーが多いですね。松井(一郎)さんは、「俺自身は別姓にしないけど、別姓にしたい人はそれでいいやんか」と言っています。

 僕も同じ考えです。同性婚だって、僕自身は同性愛者じゃないけれど、他人が同性で結婚したいならそれを否定する理由はありません。だって彼らは誰にも迷惑をかけていないんだから。選択的夫婦別姓や同性婚に反対している維新のメンバーにその理由を聞いても、理屈はなくて「そういうのはイヤ」と言うだけ。自民党が夫婦別姓反対、同性婚反対でいくなら、野党は、自民党が示すのとは別の選択肢を国民に対して提示し、選挙で有権者に選んでもらうようにするのがその役割だと思います。

木村 野党としてあれだけいろいろな政党があって、夫婦別姓や同性婚を選択可能にする法案も提案されているのに、大きなアピールにならないのが残念です。国民も、もっと積極的に声をあげて、よい提案をした野党を支えてもよいと思います。

 最近は、中間層を反映する政党がないように感じます。中間層は、あまり大きな声を上げない。だから、もともとはいたってまともな保守系の政治家であっても、ネット右翼の言説に迎合していく傾向がある。他方で、立憲民主党や共産党も、国民の支持が広まらないものだから、極端な護憲派を見て動かざるを得なくなる。そんな悪循環に、どの党も陥っているのは残念だと思います。

橋下 夫婦別姓はつきつめると戸籍の問題にぶつかるのですが、マイナンバーで管理する時代に戸籍なんかいらないでしょう。だいたい先進国で夫婦同姓を強要しているのは日本くらいです。お父さん、お母さん、子どもの姓がばらけたからといって、家族の一体感が失われるわけじゃない。別姓でいい人がいるならいいじゃないですか。国会議員ごときが、家族の一体感を確保するには同姓でなければならないと国民に強要するなんておこがまし
いですよ。

木村 今は夫婦別姓のまま法律婚を認める制度がないので、別姓を望むカップルは事実婚でやるしかない。これではかえって、法的な保護を望んでいるカップルを、不安定な状態に追い込んでしまいますからね。

橋下 これくらいの制度を変えられないような政治が、財政やら社会保障制度やらなんやらで、日本の国を立て直せるわけがない。夫婦別姓や同性婚の話だけではなく、僕が政治家のときに、自分の特定の価値観を有権者に押し付けることはほとんどありませんでした。国歌起立斉唱条例だって、府民には強要していません。公務員である教職員だけに義務を課しました。府民は好きにやればいいんです。なのに「ハシズム」とか言われて(笑)。そりゃぁ、巨大な役所組織を動かし、これまで定着していたルールや制度や慣行を変えるには、一定の権力を行使しなければなりません。やはり「力」が必要です。そのような経験のないインテリたちは、「力」を極度に嫌がりますね。

 今回の北朝鮮問題であらわになったと思いますけど、自分で進むべき道を決めて、その道を歩んでいく力強さが日本には足りない。そこに忸怩(じくじ)たる思いがあります。金正恩(キムジョンウン)はなんだかんだと言っても自分の方針を貫いていて、あの背景には軍を持っていることがあると思う。だから僕は、日本も最終的には自国を守るための軍を持つべきだと思っているんだけど、日本には軍を持つための前提条件が欠けているよね……。政府のモリカケ問題へのひどい対応をみていたら、太平洋戦争と同じようになるわって思ってしまう。