飯田豊(立命館大産業社会学部准教授)

 バラエティー番組の「演出」については、報道番組やドキュメンタリー番組における「情報」の捏造(ねつぞう)や改竄(かいざん)などとは異なる次元で、これまで繰り返し「やらせ」との境界が問われてきた。

 もっとも、1980年代にはテレビ全体の「バラエティー化」が指摘されるようになり、お笑い番組に限らず、多くの報道番組や情報番組、音楽番組やトーク番組などが、少なからず共通した演出技法に基づいて制作されるようになった。その結果、現在では「情報バラエティー」や「音楽バラエティー」、「トークバラエティー」といった、ハイブリッドな番組ジャンルが定着している。

 『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系、2007年〜)は、いわゆる「ドキュメントバラエティー」の系譜に位置づけられる。ドキュメンタリー番組や紀行番組の特徴を兼ね備えているからこそ、バラエティー番組といえども、過度な演出は許されないという意見が根強い。

 ドキュメントバラエティーの技法は、『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(日本テレビ、1985〜96年)が先鞭(せんべん)をつけ、1990年代に洗練された。『進め!電波少年』(日本テレビ、1992〜98年)、『ASAYAN』(テレビ東京、1995〜2002年)、『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』(日本テレビ、1996〜2002年)などが代表的だ。

 『進め!電波少年』では、1996年にお笑いコンビの猿岩石がユーラシア大陸横断ヒッチハイクを達成したが、飛行機を使って紛争地域などを回避していた事実が後になって発覚し、(極めて賢明な判断でありながら)番組内で伝えていなかったことが厳しく批判された。

 その一方、『ウンナンのホントコ!』(TBS、1998〜2002年)内で人気を集めた「未来日記」シリーズ、あるいは『あいのり』(フジテレビ、1999〜2009年)のように、主として一般人を起用したドキュメントバラエティーも人気を博した。
※写真はイメージです(GettyImages)
※写真はイメージです(GettyImages)
 これらの番組はいずれも、あくまで脚本に沿って演出された「物語」に乗せて、出演者の喜怒哀楽を表現していた。過剰な演出や不自然な演技を含めて楽しむ(=テレビが「やらせ」なのは当たり前!)という冷めた視聴態度を育んでいった半面、インターネット上の電子掲示板などでは、これを全面的に敵視する見方(=テレビなんて「やらせ」だから嫌い!)も目立つようになる。

 ドキュメントバラエティーに限らず、例えば『さんまのSUPERからくりTV』(TBS、1992〜2014年)に代表される、一般人の言動が笑いを誘う番組には、大抵「やらせ疑惑」がつきまとう。インターネットの普及に伴い、テレビに対する敵意が可視化されたことに加えて、番組に出演した一般人、ロケの協力者や目撃者などによって、制作の手の内がバラされやすくなったことも無視できない。