ただ、バラエティーでは見る側の意識が違うのである。報道番組ではそこで報じられるニュースの一語一句が間違いのないように作り込まれているのに対して、バラエティーではそこまで厳密に考えられていない場合もある。

 なぜなら、視聴者の間にそれを演出の一部として許容する感覚があるからだ。番組が面白ければ、そして番組の核となる部分に嘘や間違いがなければ、特に問題はないと思う人が大半だろう。

 今回の『イッテQ!』の騒動で番組側を擁護する意見が目立っていたのは、文春で指摘された「祭り捏造疑惑」が、視聴者の多くにとっては特に核心的な問題だとは感じられていなかったからだろう。

 『イッテQ!』の面白さは、宮川大輔、イモトアヤコなどのタレントが海外ロケで体を張って過激な企画に挑戦するところにある。現地で実際に祭りが存在するかどうかは特に重要だと思われていなかった。だから見逃されたのである。

 例えば、今回の疑惑が「イモトアヤコは本当はキリマンジャロに登っていなかった!」といった内容だったとしたら、間違いなくもっと大きい騒動になっていたはずだ。なぜなら、制作者が最もこだわっている「挑戦」の過程そのものに嘘があったとしたら、それはこの番組の核心にかかわる致命的なやらせであるということになるからだ。
お笑い芸人、宮川大輔=2010年10月、東京ビッグサイト(撮影・千村安雄)
お笑い芸人、宮川大輔=2010年10月、東京ビッグサイト(撮影・千村安雄)
 ただ、今回はたまたま多くの視聴者がやらせを問題視しなかっただけであり、やらせが悪くないわけではない。外国の文化について誤った情報を発信したことは事実であり、その責任は決して軽くはない。日本テレビも本件については事実を認めて謝罪している。

 ここまで述べたように、やらせと演出の違いは曖昧なものである。このため、制作者は無意識のうちに境界を踏み越えてやらせと呼ばれるような行為に手を染めてしまうことがある。それがどれほど深刻なものであるかということは「バラエティーならセーフ」「視聴者が気にしなければセーフ」といった大ざっぱな一般論に頼るのではなく、あくまでも個別に考えて判断していくしかないだろう。