しかし、その一方で、水上の狭くて粗末な橋を自転車で渡る、というアトラクションを見て「何かラオスの文化にゆかりがありそうだな」とも感じた。なぜなら、ラオスを代表する観光地、メコン川流域にある世界遺産ルアン・パバンという街では、川にかかる幅1メートルにも満たない竹でできた粗末な橋「バンブーブリッジ」もまた、「インスタ映え」する名物スポットであったからだ。

 ラオスの世界遺産は、このルアン・パバンとワット・プーの二つしかないので、ラオスを訪れる年間300万人超の外国人観光客にとって「バンブーブリッジ」は決して無名な場所ではない。安全性に難のあるような「不安定な橋を渡る」という行為は、ラオス観光では比較的知られた「天然のアトラクション」であり、少なくとも筆者はそこに「橋祭り」企画との関連性を感じた。

 番組を象徴するイモトの体を張ったバラエティーを超えた出演が、一見すると、ドキュメンタリーや記録映像のように誤解・錯覚をさせてしまったこともあるだろう。だとしても、「完全なバラエティーである」という前提を忘れてはならない。むしろ、「エンターテインメント・リテラシー(読解力)」を欠如しつつ、インディーズ評論家化した視聴者が一方的にリアリティーを求めすぎていているだけのようにも見える。

 エンターテインメントの世界では、ジャングルはいつでも「前人未到の密林」であるし、出される資料は必ず「トップシークレット」である。男女間のもつれで犯罪を行う女性の多く「美人毒婦」であるし、来日する格闘家は常に「地上最強」である。ごく普通の一般人でも「内部事情に詳しい関係者」なのだ。それを「やらせ」「捏造」と捉えるか、「エンターテインメント手法の一つ」と捉えるかは、見る側の知性と感性、そして寛容さにかかる。

 エンターテインメントの在り方が今、大きく変容している。この事実もまた忘れずに付記しておきたい。

 バラエティー番組であるという前提を考慮に入れず、テレビ番組の中での過剰な演出や誇大表現などを「やらせだ、捏造だ」と糾弾し、それをネット民たちが騒ぎ、拡散し、テレビのニュースとなり、ひいてはテレビ局の社長や放送倫理・番組向上機構(BPO)、時には政治家などをも巻き込んだ大騒動へと発展する。その一連の騒動自体が、視聴者やネット民を楽しませる、見事にネットとテレビが融合した「総合エンターテインメント」になっているように思えてならない。

 今回の件でも「ラオス政府が動き出した」とか「ラオス政府関係者によれば」といった報道も散見されるが、ニュースソースはどこなのか。ラオス政府関係者とはいったい誰なのか。『イッテQ!』のやらせ疑惑以上に「疑惑」がある。それもまた「総合エンターテインメント」を彩る演出の一つになっている。
ラオスの世界遺産ルアン・パバンにある「バンブーブリッジ」(ゲッティイメージズ)
ラオスの世界遺産ルアン・パバンにある「バンブーブリッジ」(ゲッティイメージズ)
 週刊文春は、そういった「総合エンターテインメント」における主役であり、視聴者を楽しませる名プロデューサーでもある。ネット上に無数に存在するSNS民たちは細かい検証をしたり、コンテンツを作ったり、拡散にいそしむ「敏腕ディレクター」であり、小回りのきく機敏な「アシスタント・ディレクター(AD)」だ。テレビ局幹部や有名タレントという豪華な「エキストラ」もいい味を出している。さらには、元テレビ局員を称する文化人や大学教授などまでが登場し、「現場を知る」という立ち位置で自分のかつての職場に対して無責任な断罪をしてトドメを刺そうとする。

 「娯楽の王様」の座から陥落したテレビに代わって消費者を楽しませる「総合エンターテインメント」の中で、名プロデューサー、敏腕ディレクターたちに踊らされている視聴者もテレビ関係者たちも、そろそろこの新しいエンターテインメントの構造に気が付いた方が良いのではないか。