2018年11月26日 13:37 公開

ウクライナ海軍は25日、同軍の小型艦など3隻に、ロシア連邦保安局(FSB)の監視船が発砲し、3隻を拿捕(だほ)したと発表した。現場は、ロシアが併合したウクライナ南部クリミア半島近海。これによって、ロシアとウクライナの緊張が大幅に高まっている。

ロシア側の監視船が、「領海侵犯」だとしてウクライナ艦3隻の通行を阻止したのを発端に、ウクライナ海軍によると、同軍の小型砲艦2隻と曳航艇1隻がロシア側に拿捕された。複数の乗組員が負傷したという。

両国とも責任は相手国側にあると非難している。ウクライナ議会は26日、戒厳令の布告について議決する。

ロシアは拿捕現場付近のケルチ海峡を結ぶ橋の下へ、タンカーを派遣した。同海峡は両国に接するアゾフ海への唯一の入り口。

25日夜に招集されたウクライナ国家安全保障・国防会議で、ペトロ・ポロシェンコ大統領はロシアの行動を「理不尽で常軌を逸している」とした。

ロシアは国連安全保障理事会の緊急会合開催を要請した。米国のニッキー・ヘイリー国連大使はツイッターで、米東部時間26日午前11時(日本時間27日午前1時)から緊急会合が開催されると明らかにした

ロシアは2014年にクリミア半島を併合。近海の黒海とアゾフ海ではこのところ緊張が高まっている。

問題発生の経緯

25日朝、ウクライナ海軍の小型砲艦「ベルジャンスク」と「ニコポル」、曳航艇「ヤナ・カパ」が、黒海のオデッサ港からアゾフ海のマリウポリに向かおうとした。

ウクライナ海軍は、ロシア側が曳航艇に体当たりし、艦艇の進行を阻止しようとしたと説明している。ウクライナ川はケルチ海峡まで航行したが、すでにロシアのタンカーが海峡を封鎖していた。

ロシアは戦闘機2機とヘリコプター2機を同海域に緊急出動させた。ロシアはウクライナによる領海侵犯だと非難し、安全保障上の理由から周辺海域の交通を一時停止したと述べた。

ウクライナ海軍はその後、3隻は海域を離れようとしていた際に攻撃され無力化されたと発表。乗組員6人が負傷したと述べた。

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国境警備にあたるロシアのFSBも後に、自分たちの監視船1隻がウクライナ船3隻を拿捕するため武力行使したと認めた。ただし、けがをした乗組員は3人だけと主張した。

一方のウクライナは、同国の船団がマリウポリに向かうため海域を通過すると、ロシア側に通知済みだったと説明している。

国際社会の反応は

欧州連合(EU)は「ケルチ海峡の航行の自由を回復」するようロシアに呼びかけると共に、「最大限に自制して行動するよう、全当事者」に要請した。

北大西洋条約機構(NATO)は、「ウクライナの主権と、領海航行権を含む同国の領土保全を、NATOは全面的に支援する」と表明。さらに、ロシアは「アゾフ海にあるウクライナ側の港を制限なく利用できるように」すべきだと述べた。

背景は

アゾフ海はクリミア半島の東にある浅海域。クリミア半島はウクライナ南部に位置するが、一部は親ロ派分離主義者に支配されている。

アゾフ海北岸にあるウクライナの2港、ベルジャンスクとマウリポリは、穀物輸出や鉄鋼生産、石炭輸入においてウクライナに重要な役割を担っている。

ウクライナとロシアが2003年に結んだ協定は、両国の船団による自由航行を保証していた。

しかしロシアは最近、ウクライナの港に出入りする船舶の臨検を始めた。EUは今月前半、問題に対処するため「的を絞った対策」を実施すると通告した。

ロシアによる臨検は、ウクライナ側が3月にクリミア半島で漁船を拿捕した後すぐに始まった。ロシア政府は、ケルチ海峡にかかる橋に対する、ウクライナ過激派による潜在的危機を指摘。安全保障上の理由で検査が必要だと述べている。

2014年4月、分離主義勢力が複数の政府庁舎などを強奪し、ウクライナ政府と対立して以降、東部ドネツク州やルガンスク州では1万人以上が殺害されている。

ウクライナと西洋諸国は、この地域に軍隊を送ったり、分離主義勢力を武装化したとして、ロシアを非難している。

ロシア政府は疑惑を否定しているものの、ロシアの志願兵が反政府勢力を支援しているとも述べている。


<解説>責任のなすり合い――スティーブン・ローゼンバーグ BBCニュース(モスクワ)

ロシアとウクライナのクリミア半島における緊張状態は、ここ数カ月で高まっている。

ロシア政府とウクライナ政府が2003年に結んだ協定では、ケルチ海峡とアゾフ海は両国が共有する領海となっている。

しかしこの海域では最近、ウクライナの港に出入りする全ての船について、ロシアが臨検を始めた。

ロシアが武力行使でウクライナ艦を拿捕し、負傷者も出たことで、事態は一気に悪化した。しかし、ロシア政府は責任を認めないだろう。

ウラジーミル・プーチン大統領の下、ロシアは武力を行使するたびに同じ言い訳を繰り返してきた。「我々が始めたのではない」と。

ロシアとグルジア(現ジョージア)間で2008年に戦われた南オセチア紛争でも、クリミア半島に2014年、「リトル・グリーン・メン(ロシア特殊部隊)」が現れた際もそうだった。ロシア政府はその後、クリミア半島を併合した。

なので25日の出来事の責任と、次に何が起きるにせよその責任を、ロシアはウクライナのポロシェンコ政権に負わせようとするはずだ。


(英語記事 Tension escalates after Russia seizes Ukraine naval ships