そもそも新日鐵住金は、被害者の要求には応じなかったものの、訴えられた当初は彼らが同社を訪問した際には社内に招いて話に耳を傾けていました。しかし、2003年の日本の最高裁による請求棄却の前後から、同社は高齢の被害者を社内にも入れず門前払いを続けました。会社の前で彼らを3時間も立たせる同社に対し「せめて座る椅子でもお願いできないか」という支援者のお願いさえも耳を貸しませんでした。その態度は、今回の韓国大法院の判決を受けても変わっていません。

 判決直後の11月12日に原告代理人の弁護士が「損害賠償義務の履行方法」「賠償金の伝達式を含む被害者の権利回復のための後続措置」について話し合いたいと要請書を持参しました。

 しかし、社員は一切顔を見せることなく面会を拒否し、要請書についても「預かる」とガードマンを通じて回答するだけで、要請書を受け取るのかどうかの意思すら確認することができず、仕方なく弁護士も引き上げざるを得ませんでした。新日鐵住金は「各国・地域の法律を遵守し、各種の国際規範、文化、慣習等を尊重して事業を行います」という企業行動規範を掲げていますが、韓国の法律や判決には従わないということなのでしょうか。日本を代表するグローバル企業として恥ずかしいことだと思います。

 今、私たちが忘れてはならないのは、彼らは日本の侵略戦争・植民地支配の犠牲者であるということです。何百万人もの日本人を兵士として戦争に借り出したことから、極端な労働力不足に陥った日本がその労働力を補うために「募集」にしろ「官斡旋」にしろ「徴用」にしろ、手段は別として意に反した「過酷な労働=強制労働」をさせたのです。

 これは、最近の研究で明らかになった80万人とも推定される人たちを朝鮮半島から無理やり連れて来た、という動かし難い歴史的事実です。韓国は「ゴールポスト」を動かすので信用できないという人もいますが、歴史的事実は動かせません。
2018年11月、新日鉄住金本社を訪れ、取材に応じる原告側の弁護士ら(著者撮影)
2018年11月、新日鉄住金本社を訪れ、取材に応じる原告側の弁護士ら(著者撮影)
 2000年に三菱重工の広島工場で被爆した元徴用工が釜山の裁判所に訴えた裁判の大法院判決が11月29日に出されます。この裁判の原告らはすでに全員が亡くなっています。もう被害者に残された時間はありません。

 被害者の声に耳を傾けて納得できる解決を日本と韓国の両政府、そして強制連行・強制労働にかかわった企業が一緒になって図ることが、本当の意味で未来志向の日韓関係を築いていくことになるのではないでしょうか。53年前に結ばれた条約に不十分なところがあったのであれば、それを正すのが現在に生きる私たちの責任でもあるのです。