櫻田淳(東洋学園大学教授)

 現在、日韓関係の険悪さは、既にデフォルト(規定事項)である。文在寅(ムン・ジェイン)大統領の登場以降、近時だけでも日韓慰安婦合意の「骨抜き」の動きや、新日鉄住金(旧新日本製鉄)の戦時労働者訴訟に係る韓国大法院判決に表れたように、日韓関係にはネガティブな材料だけが次々と積み重なっている。

 ゆえに、今後、どのような悪しき材料が日韓関係に絡んで噴出したとしても、それは、もはや大仰に反応するに値しない。それは、現下に零下30度に達している日韓関係の「温度」を、零下40度や零下50度に下げるほどの意味しかないのであろう。近々、韓国大法院が三菱重工の戦時労働者訴訟に絡んで下す判決は、新日鉄住金訴訟と同じ類いのものになるとされているけれども、それもまた、厳寒期に入った日韓関係の「温度」低下を示す材料でしかない。

 目下、米中両国を軸にした「第2次冷戦」が始まろうとしているという観測は、既に国際政治観察に際しての「共通認識」になっている。

 10月上旬、米国のマイク・ペンス副大統領がワシントンのハドソン研究所で披露した対中政策包括演説の意義は、それが米国政治の「異形の存在」としてのドナルド・トランプ大統領ではなく、彼よりは米国政治の「主流」や「体制派」の立場に近いペンス氏の口から発せられたことにある。ペンス氏の「ハドソン」演説は、現下の米国における最大公約数的な対中認識を反映したものであるといえる。

 そうであるならば、日韓関係もまた、米中「第2次冷戦」の相の下に語られなければならない。米中「第2次冷戦」の局面では、東南アジア・南シナ海と並んで朝鮮半島・東シナ海が、その「激突の場」になるというのは、あえて語るまでもない。

2018年11月、APEC首脳会議に
出席したペンス米副大統領(奥)と
習近平・中国国家主席(ロイター=共同)
 1980年代末期までの「第1次冷戦」局面では、韓国が日米両国にとって「こちら側」にあるのは、自明であったけれども、「第2次冷戦」局面ではどうなのか。「第1次冷戦」局面でも「第2次冷戦」局面でも、日本が対韓関係に寄せる国益の本質は、「韓国は、中露両国や北朝鮮のような大陸勢力に対する『防波堤』の役割に徹する気があるか」ということでしかない。

 それは、米国の極東戦略の必要に合致するものでもある。

 ちなみに、シンガポールのリー・シェンロン首相は、11月中旬、パプアニューギニア・ポートモレスビーで行われたアジア太平洋経済協力会議(APEC)に先立つ東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国会合閉幕直後、次のように語った。