だが世論調査は、特に安倍政権には間違いの元になる。なぜか。再登板後の安倍政権は、歴代の自由民主党中心の歴代政権とはまったく違う特色を持つからだ。

 それは、選挙権を得たばかりの18歳や19歳に支持が高く、50代以上の世代にまったく人気が無いことだ。

 世論調査は、回答者が特定の世代に偏らないようノウハウを持って各世代に万遍なく電話で質問していく。ところが法改正でせっかく有権者となった18歳、19歳はほとんど答えない。この世代の回答率は何と、およそ1%である。100人のうち1人答えるか答えないか。したがって世論調査は、安倍政権の本来の支持層が「たった今の政策」をどう考えているかをほとんど反映しない。一方、高齢世代は「日本はすべて悪かった」という教育を受けて育ち、インターネット上の情報の活用もまだまだ少ない。この世代は安倍総理が日本の敗戦後の歩みを変えることを強く警戒してきたから「この頃の現実路線には安心感がある」(70代の元教員)となる。

 安倍総理はまずは、足元の党内の声を聴くべきではないか。

 例えば、参議院の厚生労働委員会である。わたしはこの委員会に属していない。しかし1回生議員として「雑巾がけ」を積極的にやると決めているから、出席できない議員の差し替えを務めていた。すると野党議員が「妊婦加算」について「おかしいではないか」と問うた。病院で妊婦と分かれば治療費を余計に払えという制度が4月から始まっている。わたしの周りの自由民主党席には医師でもある女性議員が複数いる。その議員らから「人手が足りないから無理にでも外国人を入れようとしているのに、なぜ妊婦を苛(いじ)めるの」という秘めた声が幾つも聞こえた。

 わたしは議事の邪魔にならないよう他には聞こえない声で「レントゲン一つとっても医師の負担増は分かりますよね。しかしそれは妊婦ではなく国が負担すべきです。人手不足は人口減で起きているのだから、妊婦こそ国の宝ですね」と応じた。そして野党議員が質問を終えるとき、男女を問わず自由民主党席から自然に大きな拍手が起きた。

 この厚労委では、水道法改正案の趣旨説明も行われた。水道事業がこれも人口減で行き詰まりを見せ、老朽化した施設を更新できないでいる。だから自治体が水道の運営権を民間に売れるようにする法改正で、すでに前国会で衆院を通過している。この運営権にフランスの水メジャーと中国が強い関心を持っているとされるが、命の水、ことに日本は水の邦(くに)でもある。少なくとも外資規制を掛けるべきだ。
青山繁晴参院議員=2018年9月(仲道裕司撮影)
青山繁晴参院議員=2018年9月(仲道裕司撮影)
 厚労委で自由民主党のあるベテラン議員は、わたしに「安倍総理は何を考えている。水道法も妊婦加算も入管法改正も人口減への対処が間違ってるよ」と小声で言い、「(自由民主党本部で開かれた)法務部会で青山さんがずっと入管法改正に反対していたあの主張、全く正しいよ。俺(おれ)は立場上、言えないけどね。地元でもみな、そう言っているよ。このままじゃ選挙に負ける。頑張ってほしい」とわたしの眼を覗き込んだ。

 その法務部会では、「業界から頼まれてきた。早く外国人が欲しい」と正直に、あるいは露骨に発言した議員もいらっしゃった。ある意味、ミッション(使命、作戦)を帯びた反対論潰しの試みがあったわけだ。ところが部会の外では閣僚経験者や党の重鎮までが党本部のエレベーターや国会議事堂の廊下で「入管法改正反対は正しい。主張を続けてください」と仰る。「反対論はおかしい」という声は部会の外では、皆無だ。