そこで、批判を覚悟の上で提案したい。海外展開を行っている大企業はアベノミクスの恩恵を受け、株価も上昇している。ところが、今の経営陣はバブル崩壊の経験者であるため、内部留保を積み上げ、賃上げによる支出を恐れ、さらなる安価な労働力を外国人に求める。そこで、労働基準法にでも「企業トップと末端の賃金格差は○倍まで」と定めれば、さっぱり進まない賃上げもトップから進めざるを得なくなり、社会問題である収入格差も緩和、労働意欲も上がるのではないか。

 また、企業が大卒や新卒にこだわらず、独自の採用基準で若い人材を求めれば、就職のためのカタパルト(射出機)と化した意味無き大学は淘汰(とうた)され、大学全体のレベルも向上して洗練されるだろう。

 こうして、企業が学歴偏重の採用基準を変えれば、親は借金してまで子供を大学に送る必要がなくなり、その資金を老後に回せる。子供は10代から社会に出ていれば、20代後半にはベテランの域に達するので、結婚資金も貯(た)まる。短期的には成婚率が、中期的には出産率と出産人口が、長期的には労働人口も上がるのではないか。

 そのためには企業トップの意見を尊重する自民党の他に、勤労者のための、健全で主体性のある野党が必要だ。本来であれば、企業に君臨する「ブルジョア階級」の収入を規制し、「プロレタリア」の賃金を底上げする政策については、日本共産党あたりに期待したいところではある。また、「自民あっての反自民」を貫く立憲民主党は、今回の実質的移民政策にも反対するのだろうか。

 安倍晋三内閣は「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)に「移民政策を採らない」としているが、自民党議員は移民の定義を知らないか、口にできない。国連人口部の定義によれば、移民とは「主権のある母国を1年以上離れて外国に暮らす人」を指す。そして、この移民の概念には、密入国者や不法滞在者、帰化した初代が含まれる。

 既に日本には、留学生を始めとする移民と「移民予備軍」が256万人以上も存在するが、自民党議員がこれを口にすることは骨太方針の矛盾をさらけ出すことになる。だから「移民」という言葉に異を唱え、改善できる議員はいないのだ。

 そもそも、議員の仕事は理想の発表や世論啓発ではなく、法の立案や審議である。法改正案に部会決議文で歯止めを盛り込んだ党内の反対議員も、議論に参加し論議を尽くした以上は、組織としての決定に文句をつけることはできない。それを期待するのが酷であることは、何らかの組織に属する社会人ならわかるはずだ。
自民党本部=2018年9月(納冨康撮影)
自民党本部=2018年9月(納冨康撮影)
 だが、読者諸兄は昨年の流行語をお忘れか。そう、ここに「忖度」が必要である。発言議員の9割ほどいた反対議員は心の中で、決議文を付けても力が及ばず手を離れたこの法改正案を誰かに潰してほしいのだ、と私は「忖度」した。

 国民の政治参加は選挙のみにあらず。世論を大いに盛り上げ、燃え上がらせて法案を灰にするよう、ともに声を上げようではないか。