平野和之(経済評論家)


 国会で出入国管理法改正案(いわゆる移民法案)をめぐり与野党の攻防が続いているが、ここで再度認識してほしいことがある。それは、いわゆる「移民」受け入れのメリットが、ほとんど国民に示されていないことだ。そこで、本稿では、批判が多い実質的な「移民解禁」について、やり方次第ではメリットが大きくなる方策について考察したい。

 まず、日本が長年脱却できないデフレの原因は何だと思うだろうか。諸説あるが、一番イメージしやすいのが、少子高齢化である。ところが、経済学的には、先進国はどこも少子高齢化であり、日本だけがデフレの理由にはならないという視点が必要だ。これは、先進国で日本だけが移民を受け入れていないという点で説明がつく。

 ついでに言えば、日本の少子化対策について、欧州の出生率が上がったから日本も女性が働きやすい環境整備をしろという声もあるが、欧州は婚外子を認めたからだ。また、アメリカは女性が働く環境整備がなくても、出生率が上がった。なぜなら、自国民の出生率は低いままだが、移民の出生率が全体を底上げしたのだ。

 本来、出生率は、低所得者や難民、地方の生活者ほど高く、都市化とともに減少する。日本も少子化が問題視されているが、地方はさほど少子化は進んではいない。人口は減っているが、都市部に吸い取られているだけだ。同じことは、中国でも起きており、一人っ子政策を緩和しても都市部では2人目は作らない家庭が多く、増えていない。

 そこで本題に戻るが、国内で根強い移民反対論にメスを入れるにはどうすればいいだろうか。

 そもそも、企業側は労働力不足をカバーしたいので、賃金の安い外国人労働者を増やしたいのが本音だ。経営的側面が移民規制緩和論の根底にあり、主導しているのは経団連だ。だからこそ移民緩和論が台頭しているのだ。

 では、企業側が望む時給とはいくらかご存じだろうか。筆者が全国の企業経営者らの講演会で毎回リサーチしているが、500~700円程度である(ちなみに東京都の最低賃金は985円)。しかし、今は労働力が不足し、最低賃金で募集してもどこも人が集まらない。だから、最低賃金で働いてくれる技能実習制度の外国人を受け入れたがるのだ。

 こうした経済的側面、経営的側面で見ると外国人労働者の受け入れはメリットが大きいが、なぜ、これほど批判されるのか。それは昨今起きている、イギリスのEU離脱、アメリカのトランプ現象、世界の排他主義の台頭、すべては、移民がテロや犯罪の温床になり治安が悪化するとされているからだ。そして最も大きな理由は、移民労働者によって自国民の雇用が奪われ、自分たちの生活が苦しくなることへの懸念だろう。
※写真はイメージ(ゲッティ・イメージズ)
※写真はイメージ(ゲッティ・イメージズ)
 そこで、まず、最低賃金以下の労働力を確保したい企業の視点から考察する。高齢者3500万人について、国は段階的に年金支給開始年齢を70歳に引き上げたいのが本音で、理想は75歳である。

 ところが、働かそうにも企業側の文化が高齢者に向いていない。これをまずは生かせるようにするため、年金受給者の最低賃金を短時間においてのみ限定的に解禁する。

 例えば、高齢者を4時間限定の労働なら時給500円で雇用できるとしたらどうか。若者一人ではなく、高齢者2人のシフトを組めば、高齢者であることのハンデと天秤にかけてどちら選ぶだろうか。筆者が経営者らの講演会で挙手を求めるとほぼ、100%この案に賛成である。

 つまり、高齢者の雇用促進を加速させる制度をとり、それでも足りない差分が判明したところで、初めて外国人労働者の受け入れと総量を議論すればいい。