3社を相手にする11件以外の4件のうち日立造船を1人の原告が訴えたもの以外の3件は、62人(当初は252人だったが62人以外は取り下げとみなされた)、667人、88人という多数の原告がそれぞれ3社、70社、18社をまとめて訴えているところに特徴がある。

 2015年に最高裁が新日鉄住金の先行裁判に対して原告敗訴の高裁判決を棄却して高裁に差し戻す判決を下した後、勝訴の可能性を見た韓国内の弁護士や運動家の勧めで多数の原告が慌てて起こしたという印象がある。なお、三菱重工はこの3件全部でも被告とされ、新日鉄住金は2件で被告になっている。したがって、三菱重工は合計8件、新日鉄住金は合計5件の裁判で訴えられていることになる。

 3社以外に提訴されているのは以下の67社だ。

飛島建設、麻生セメント、安藤ハザマ、石原産業、岩田地崎建設、宇部興産、王子製紙、大林組、角一化成、鹿島、クボタ、熊谷組、小林工業、佐藤工業、三光汽船、山陽特殊製鋼、昭和電気鋳鋼、清水建設、品川リフラクトリーズ、住友化学、住友金属鉱山、住石ホールディングス、常磐興産、菅原建設、大成建設、ダイセル、ダイゾー、太平洋興発、デンカ、東邦亜鉛、東芝、新潟造船、西松建設、日産化学、日産自動車、ニッチツ、日鉄鉱業、日本通運、日本曹達、日本冶金工業、日本郵船、日油、野上、函館どつく、パナソニック、日立造船、広野組、フジタ、古河機械金属、北海道炭砿汽船、松本組、三井金属、三井松島産業、三井E&S造船、三菱ケミカル、三菱倉庫、三菱電機、三菱マテリアル、三宅組、森永製菓、山口合同ガス、ラサ工業、りんかい日産建設、DOWAホールディングス、IHI、JXTGエネルギー、TSUCHIYA

 なお、私たち歴史認識問題研究会の調査で、韓国政府が273社を強制動員を行った現存企業と認定していることが判明した。

 この273社には上記3社と67社が含まれる。したがって、全体の構造は90年代から日本の組織の支援の下で訴えられていた3社、2012年の韓国最高裁差し戻し判決後、駆け込み的に訴えられた67社、今回の不当判決により今後訴えられる危険性が大きくなった203社ということになる。
韓国人元徴用工訴訟 判決が言い渡される前に韓国最高裁前で集会を開く原告側の支援者ら。新日鉄住金(旧新日本製鉄)の上告を棄却、賠償を命じる判決が決定した=2018年10月30日、ソウル(共同)
韓国人元徴用工訴訟 判決が言い渡される前に韓国最高裁前で集会を開く原告側の支援者ら。新日鉄住金(旧新日本製鉄)の上告を棄却、賠償を命じる判決が決定した=2018年10月30日、ソウル(共同)
 私は、現在の状況はそれほど有利ではないと見ている。なぜなら、最高裁判決は1965年の協定とその後の韓国内で2回にわたって行われた個別補償等について詳細に事実関係を記述した上で、「朝鮮半島に対する不法な植民支配および侵略戦争の遂行と直結した反人道的な不法行為に対する慰謝料」という理屈を持ち出して論理を構成しているからだ。

 その論理の土台には日本の統治が当初から不法だったという奇怪な観念がある(以下「日本統治不法論」と呼ぶ)。当時、朝鮮は大日本帝国領であり朝鮮人は日本国籍者だった。だから、彼らを日本国が戦争遂行のために軍需産業で賃労働させることは合法的な活動であり、それ自体が慰謝料を請求されるような不法活動ではない。ところが、「日本統治不法論」により、待遇も悪くなかった賃労働が「反人道的な不法行為」に化けてしまったのである。