見逃せないのは、その論理も日本の学者運動家が提供していることだ。1984年の全斗煥大統領(チョン・ドゥファン)訪日のときに日本の朝鮮統治を不法とする国会決議を求める運動が歴史学者の和田春樹氏や作家、大江健三郎氏らによって始まり、それが後の村山談話につながった。運動のピークは2010年の菅直人談話だった。そのとき、和田氏らは日韓知識人1000人が署名する声明を公表して、菅談話に統治不法論を盛り込ませようと画策した。

 菅談話にはそれが入らなかったが、その2年後、韓国最高裁が下級審ではまったく触れられなかったその論理を突然持ち出して、日本企業勝訴の高裁判決を差し戻す逆転判決を下した。これが今回の不当判決に引き継がれた。

 この論理にかかると、戦時労働者問題が「人権問題」に化けてしまう。そうなれば、国際社会で「日本はナチスの収容所での奴隷労働と同じような奴隷労働を多くの韓国人男女に強要しながら、被害者の意向を無視して韓国保守政権に幾ばくかのカネを支払って、責任逃れをしている」とする誹謗中傷が広がってしまう恐れがある。

 外務省は世界に向けて判決の不当性を広報するという。しかし、その内容が1965年の日韓請求権協定など日韓の戦後処理に限定されるなら、広報は失敗する危険がある。なぜなら、裁判を企画、支援してきた日韓の反日運動家、学者、弁護士らは「日本が戦時に朝鮮人労働者を強制連行して奴隷労働させた」「ナチスの強制収容所と同種の人道に対する罪を犯した」という事実無根の誹謗中傷を繰り返してきたからだ。

 公娼制度下で貧困の結果、兵士を相手する売春業に従事した女性たちを「性奴隷」だとして日本の名誉を傷つけた人たちが、総体的に好待遇の賃労働に就いていた朝鮮人労働者を「奴隷労働者」として宣伝しようとしているのである。すでに10月30日付のニューヨーク・タイムズが、韓国人の原告は「slave laborers(奴隷労働者)」だったと書いている。
日韓首脳会談 会談前に握手を交わす盧武鉉・韓国大統領(右)と小泉純一郎首相 ※ともに当時= 2003年6月7日、東京・元赤坂の迎賓館(代表撮影)
日韓首脳会談 会談前に握手を交わす盧武鉉・韓国大統領(右)と小泉純一郎首相 ※ともに当時= 2003年6月7日、東京・元赤坂の迎賓館(代表撮影)
 韓国は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権下で対日歴史戦争を宣言し、巨額の資金を投じて財団を作り、統治時代の調査研究を蓄積している。今では国立博物館まで建設し、動員被害を内外に広報している。

 日本は今こそ官民が協力して統治時代の真実を証明する史料と証言を集め、実証的な調査研究を行い、若手研究者を育て、国際広報を行う「歴史認識問題研究財団」(仮称)を早急に作るべきだ。新日鉄住金や三菱重工などもぜひ、資金と社内資料の提供で協力してほしい。それなしには事態は悪化する一方だと強く警告したい。