今年1月の慰安婦合意にかかわる見直しの発表時も、徴用工裁判の時も、また慰安婦関係の財団解散の際にも、文在寅の支持率はほとんど動いていない。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権期や李明博政権期のように、領土問題などの対日政策のあり方で大統領の支持率が大きく上下する状況は、今の韓国には存在しない。

 そしてそのことは、文在寅をはじめとする韓国の今日の政治家にとって、対日強硬政策を取り関係を悪化させることで得られる利益がほとんどないことを意味している。

 文在寅政権の支持率の推移をみれば、徴用工判決のインパクトがほとんどないのに対して、税金引き下げの影響の方がはるかに大きいことが分かる。

 要するに、文在寅政権が一連の事態を意図的に仕掛けているわけではないことは、彼ら自身の対応からも明らかだ。そもそも徴用工判決が出て1カ月近く経つが、文在寅自らこの問題について公の場で一切触れていない。

 これは文在寅政権がこの事態への対処の方向を決めかねていることを示している。とはいえ、それはそれで不思議なことだ。なぜなら、先に述べたような事情から、徴用工裁判においては、いったん判決が出ればその内容が日韓関係に大きな打撃を与えるであろうことは容易に予想できたからである。
徴用工裁判前後の文在寅支持率推移(出典:Realmeter(http://www.realmeter.net/)
徴用工裁判前後の文在寅支持率推移(出典:Realmeter
 慰安婦関連の財団の解散も同様だ。仮に徴用工判決への対処として何らかの政治的妥協を日本との間で模索するなら、先に締結した慰安婦合意を無にするかのような行動を行うのはマイナスにしかならない。

 加えて11月5日には、韓国外交部はわざわざ「慰安婦合意には法的効力がない」という公式解釈まで示している。先に結んだ国際的合意の法的効力を一方的に否定する相手と、歴史認識にかかわる重要な合意を新たに結ぶことは難しい。これだけ見ると韓国政府はわざわざ日本との妥協の道を閉ざしているようにしか見えない。

 結局、韓国では何が起こっているのか。その答えは彼らには確固たる対日政策がなく、政権内での十分な調整もされていない、ということである。