北朝鮮との協議に総力を注ぎ、そのためのワシントンの動きに一喜一憂する今の韓国政府にとって、日本はさして重要な存在には映っていない。だからこそ大統領も国務総理も、また外相も、今後の日韓関係をどうするのかについて具体的なアイデアを有していない。
そして、それは彼らが重視する北朝鮮問題との関連についてすらそうである。韓国政府は現在の北朝鮮を巡る動きにおいて、日本に特段の役割を求めておらず、だからこそ、いかなる具体的な提案をも伝えてこない。
彼らが日本に当面望んでいるのは、日本が彼らの北朝鮮政策の邪魔をしないことであり、それは日本が何もしてくれなければそれでよいことを意味している。
韓国側が自衛艦に旭日旗の掲揚自粛を求めた問題が勃発した直後、文在寅が年内の訪日を早々に断念して見せたように、今の韓国は日本をさほど重視しておらず、大統領もそのリスクを取ろうとはしない。だからこそ、事態は司法部や行政部の各部署がばらばらに動くことにより、ますます悪化する。
旭日旗問題にせよ、慰安婦問題にせよ、徴用工問題にせよ、例えば教科書の記述に見られるように、韓国では「国の建前として」、日本に対して批判的な意見が主流である。ゆえに、誰かが日韓関係を考慮して統制しなければ、悪化させる方向へとしか動かない。
そして、それは「政権が世論を配慮して行っている」というようなものですらない。誰もが何も考えずに状況に流された結果として、次から次へと新しい既成事実が作り上げられ、そのことに後から気づいた韓国政府は事後的な対処に追われることになる。

しかしながら、そこにグランドデザイン(長期的な計画)はなく、現れる施策は弥縫(びほう)的なものになる。日本の重要性が低下した状況の中、動きは遅く、誰も事態の責任を取ろうとはしない。
このため、ますます文在寅の訪日は遅れ、日韓関係は悪化していくことになる。仮に事態が政権の統制により動いているなら、政権を動かしさえすれば関係は改善するだろう。しかし、問題は事態を誰も統制しておらず、統制するための真剣な努力もなされていないことである。しばらくは韓国の対日政策は漂流を続けることになりそうである。(敬称略)