当然のことだが、入閣に際しては、スキャンダルなどで内閣の足を引っ張ることがないか「身体検査」が行われる。他派閥からの推薦であれば、閣僚になった途端に「文春砲」がさく裂するリスクもある。それでも二階氏は「この人はスキャンダルがあるからダメですよ」とすげなく断られたかもしれない人物を強引に押し込んでいる。安倍政権にとっては、支持率にも影響しかねないマイナス要因ではある。

 だが、安倍首相にとって、二階氏が幹事長ポストにあることのプラス、マイナスを考えると、スキャンダルを抱えた入閣待機組を押し込まれるマイナス以上のプラスがあると思っているからこそ、二階幹事長の続投を黙認しているのである。では、「マイナスを上回るプラス」とは何なのか。

 第一は「二階氏以外の幹事長では、政権が一挙に不安定化しかねない」というリスク管理である。最近、マスコミでは「岸破義信」(岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長、菅義偉(よしひで)官房長官、加藤勝信総務会長)などと、ポスト安倍の候補者として4人の実力者の名前が取りざたされている。

 しかし、現状では二階氏に代わって、この4人のうち誰が幹事長になったとしても、その人物がポスト安倍の一番手に躍り出るのは難しい。もっと言えば、石破派などを除き自民党内で安倍政権を支える結束が一気に崩れてしまいかねない。次の総理総裁の座を脅かす心配がない二階氏が幹事長でいることが、安倍一強の「微妙な安定」のプラス作用をもたらしているのである。

 第二は「参院選への盾、安倍首相の隠れみの」になり得るという点だ。2019年の参院選に向けて、安倍首相に敗戦の累が及ぶのを避ける可能性も期待できるからだ。

 6年前の参院選では、自民党が選挙区47議席、比例18議席で合計65議席を獲得したが、この獲得議席は現行制度下では最多議席であり、次期参院選では自民党が議席を減らす可能性が極めて高い。誰もがこのタイミングで幹事長として敗戦の責任を取るのは避けたいところだろう。ましてや、安倍首相の責任論に発展するのは何としても避けたい。二階氏が泥をかぶって勇退するかどうかは「一寸先は闇」で何とも言えないが、来夏の参院選に向けて、ここでも「微妙な座りのよさ」があるのは確かだ。

 第三は、小沢一郎氏の手の内を知り尽くした「策士」としての期待感だ。その小沢氏は来夏の参院選で野党を糾合して「最後の勝負」をかける策動が取りざたされている。特に焦点となるのは改選数1のいわゆる「1人区」、その選挙区の数は31に及ぶ。

 小沢氏は、共産党も含めて野党統一候補を立て、1人区で自民党を圧倒することを狙っているとも言われる。二階氏はかつて、小沢氏とともに自民党から飛び出し、小沢氏の選挙戦術を知り尽くしている。小沢氏の裏の裏をかいて参院選勝利とまではいかなくても「敗北」を最低限にとどめることができれば、という思いもあるだろう。
2018年7月、自民党の二階幹事長(中央左)から要望書を受け取る安倍首相(同右)
2018年7月、自民党の二階幹事長(中央左)から要望書を受け取る安倍首相(同右)
 だからこそ、「問題を起こすような閣僚を送り込んだりしたが、結果オーライだったじゃないか」というような評価を二階氏が得られれば、最後の総裁任期となった安倍首相にとっても今後の政権安定につながるのである。二階氏の幹事長続投ということになれば、ポスト安倍争いでの不安定化も避けられるだろう。

 いや、それどころか、二階氏得意の権謀術数で、さらに総裁任期を伸ばす「ウルトラC」が飛び出すかもしれない。ポスト安倍の面々にとっての「利用価値」もちらつかせながら、二階派44人の「お騒がせ軍団」は、しばらくは世をはばからずに跋扈(ばっこ)することになりそうだ。