前述の通り、貸与原資の8割が返還金であり、これが大きく滞れば制度が成り立たなくなるか、あるいは公的資金(税金)の追加投入を余儀なくされることになろう。時に「JASSOは高利貸のように取り立に狂弄(きょうほん)している」と非難されるが、返還にこだわるのはまさに「次世代への貸与原資」を確保しなければならないからだ。

 ちなみにJASSOが日本育英会から事業を引き継いだ平成16年度末の3カ月以上の延滞者数は18万3千人で、返還者数の9・9%にも上っていたが、29年度末は15万7千人、同3・7%にまで低下している。返還率で言えば90・1%から96・3%にまで上昇している。仮に16年度の10%近くの延滞率が続いていたとすれば、制度の存続について大きな議論になったのではないかと推測される。

 この延滞率の低下、返還率の上昇は、基本的には日本の若者たちの生真面目さによるものと思われるが、この間にJASSOが制度存続のために尽くした様々な努力、例えば延滞者への地道な働きかけ、債権回収会社(サービサー)への回収委託、個人信用情報機関への登録などの成果と言えよう。

 こうした中、400万人にも上る返還者の中には様々な事情(病気、失業など)により返還したくても返還できない人も存在している。このため、減額返還、返還期限猶予、返還免除などの救済制度(セーフティネット)を設けており、近年は返還者の実情に応じ、制度の充実に努めている。同時にこれらの周知徹底にも取組んでいるが、残念ながら制度を知らずに延滞に陥る方々も存在している。返還が困難な状況になった場合には悩まずに、遠慮なくJASSOにご相談いただきたい。

 冒頭にも触れたように、奨学金破産や保証人問題が大きく報道され、あたかも奨学金制度自体を否定する様な論調も見受けられる。これはまさに「木を見て森を見ざる」の議論と思われる。従ってこれらについての事実を申し上げ、奨学金により大学や専修学校への進学を考えている若者たちが、奨学金制度を安心して利用できる一助としたい。

 まず「奨学金破産」について申し上げたい。奨学金返還者のうち平成28年度に新たに自己破産に陥ったのは2009件、返還者全体の0・05%である。これが多いのか少ないのか、立場によって議論も分かれるところであるが、わが国全体の自己破産割合(20歳以上の人口1・1億人に対し、6万3727件の自己破産)は0・06%であることが一つの目安となろう。

 ただ、JASSOの立場からは「奨学金破産」という造語自体に違和感を抱いている。それは、自己破産の債務内訳を知り得る限り調べると奨学金のウェイトは平均して2割前後であり、中には億単位の債務のうち50万円が奨学金といったケースも「奨学金破産」とされている。さらに破産者の31%は破産時に奨学金は延滞していない事実もある。
大学入試センター試験に臨む受験生ら=2017年1月、東京都文京区の東大 (福島範和撮影)
大学入試センター試験に臨む受験生ら=2017年1月、東京都文京区の東大 (福島範和撮影)
 昨今、奨学金の延滞者に対し「自己破産を勧めている人たちがいる」との報道もあるが、JASSOの立場からは極力法的措置、裁判所の判断に委ねることとしている。理由は2点、すなわち自己破産はJASSOの債権が損なわれ、これは公的資金(国民の税金)のロスにつながること、そして自己破産は返還者本人の経済的な再起を難しくすること、などである。

 次に、保証人問題について申し上げておきたい。最近大きく報道されており、世の中的には奨学金制度上の大問題のように受け止められているが、制度全体の極く一部の事象として捉えている。なぜならば、報道では「分別の利益がある保証人に対し全額請求」としているが、対象者は29年度中に167人、22~29年度累計で825人程であり、その比率は、返還者全体の0・02%、人的保証選択者の0・04%と極めて低いためである。

 そしてJASSOの「法的には問題ない」との姿勢が誤りとする見解も見受けられるが、改めてJASSOに差入れられている保証人の保証文面を見ると「保証人は本人が負担する一切の債務につき債務履行の責を負う」と明記されている。ただ、法的な議論はさておき、奨学金絡みで一人でも問題を抱えている人がいるとすれば、JASSOは問題解決に向け、前向きに対応しているので積極的に相談窓口に連絡していただきたい。