私は平成23年7月に理事長に就任して以来7年有余、様々な課題に直面しながら関係者、とり分けJASSOの職員と共に走り続けてきた。解決できたこと、まだまだ途上にあるもの、さらには新たな課題も発生しているが、それらは大きく入口、真中、出口と三つの時間軸に存在する。

 これは奨学金の申込者への対応に課題が集約される。手続きが煩瑣(はんさ)、分かりにくい、説明書の字が小さいなど、ここでは本人、保護者らに対する親切な説明と同時に高校らの先生方の協力も不可欠と認識している。このため、29年度から日本ファイナンシャル・プランナーズ協会の協力の下、スカラシップアドバイザー制度を創設、約3千人のアドバイザーを高校などへ派遣して丁寧な説明に務めている。

 要望があれば大学などのオープンキャンパスに出向くこととしている。ただ、毎年のように奨学金制度の変更や新設があり、とりわけ学校現場からの苦情、要望が多いのが実情だ。これらにいかに親切に対応していくか、大きな課題と認識している。

 そして、まず第一の課題は在学中の適格認定の問題で、すなわち奨学生としてふさわしい状態にあるかについて、大学などにしっかり把握してもらう必要がある。現在の制度が形骸化しない工夫も必要と考えている。第二は貸与学生の金融リテラシー向上のサポート。現在新入生の段階で、「本当に必要な金額?借り過ぎに注意!」と啓蒙しているが、在学生に対しても同様のアピールをすると同時に、減額や貸与辞退も可能と呼びかけている。第一、第二の課題は奨学金と勉学とを学生たちにどうリンクして意識づけるか、ということであり、この面での学校サイドの理解とJASSOとの連携強化も大きな課題である。

 JASSOの貸与奨学金は通常、卒業してから半年後の10月に返還が始まる。前述の様にこの返還率は新規返還者で97%、全体でも96%と極めて高い。しかしながら、母集団が大きいため人数的には、全体で15万7千人が3カ月以上の延滞者となっている。確かに16万人近くが延滞しているが、逆に410万人は通常通り返還しているのは誇るべきことである。

 しかし、JASSOとしては、延滞状況に陥った返還者への対応、すなわち前述のセーフティネットのさらなる充実が大きな課題である。そして、自己破産や保証人問題が指摘される中、保証人制度の抜本的改革も基本的な課題として視野に入れるべきであろう。すなわち、奨学金の人的保証制度を廃止し、機関保証制度に一本化するということである。もちろんこの実現のためには、保証機関、保証料率の水準と徴収方法、既往返還者への対応など検討を要する事項も少なくないが、フィージビリティスタディ(実行可能性調査)を開始すべき時期にきているのではなかろうか。
学生らに胴上げされる東大合格者ら=2011年3月、東京都文京区の東大(三尾郁恵撮影)
学生らに胴上げされる東大合格者ら=2011年3月、東京都文京区の東大(三尾郁恵撮影)
 奨学金制度改革の理想は全て返還負担のない給付型にすることであろう。しかし、全て給付型の先進国では、財源としての消費税率は20~30%と高く、わが国の実情からはなかなか難しい。従って今後の現実的な対応としては、貸与型に給付型をミックスし、貸与型をより返還者の立場に立って改善していくことである。

 幸い現在法的にも給付型が可能となり平成30年度から本格的にスタートしているのは、その一つの足掛りとなろう。また、29年度から全て機関保証を条件とし、所得に応じ返還額が変動する新たな所得連動返還制度も始まっている。こうしたことの拡充により「日本型」の奨学金制度がより進化していくことを願って止まない。