今後は、欧米諸国によるロシアへの経済制裁がさらに強化される。ロシア経済は2014年以降の経済制裁で衰退しており、財政破綻寸前の状況だという説もある。

 ここで日露関係を振り返ってみよう。ロシア極東(きょくとう)の経済拠点ウラジオストク市で2018年9月に開催された東方経済フォーラムでの出来事だ。プーチン氏は突然、こう切り出した。
  
 「日露間は70年間係争問題について議論してきたが、安倍総理から従来のアプローチを変えようという提案があった。これを踏まえて、さらに突っ込んだ話をしたい。そしていま、思いついたことがある。日露間で平和条約を締結しよう。ただ、この場ではなく、年末までに。いかなる条件を付けずにやろう」
 
 思いつきで日露関係を牛耳ろうとするプーチン氏の対応に、私は驚愕(きょうがく)した。それにしても条件抜きの平和条約とは、どんな内容になるのだろうか。1993年の「東京宣言」以降の日本政府の基本方針は、「四島の帰属の問題を解決」することを前提に、平和条約を締結することだった。逆にいえば、平和条約というのは戦後処理のことであり、国境線を確定することは最重要課題のはずだ。
2018年11月、会談する安倍首相(左)とロシアのプーチン大統領=シンガポール(共同)
2018年11月、会談する安倍首相(左)とロシアのプーチン大統領=シンガポール(共同)
 条件抜きの平和条約を提案したプーチン氏は2018年11月14日、シンガポールでの日露首脳会談に臨んだ。だがその翌日、こんな変化球を投げ込んできた。

 「安倍総理から日ソ共同宣言を基礎にした協議する用意があると言ってきた。原則として共同宣言には2島を引き渡すと用意があると書かれているが、その条件や主権がどちらに属するのか記されていない」

 1956年の日ソ共同宣言には両国間の正常な外交関係が回復した後、平和条約の締結に関する交渉を続けることで合意。ソ連は日本の要望と利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を引き渡すことに合意したと記されている。確かに、平和条約締結後にどのくらいの期限内に引き渡すとは記されていないが、2島を「引き渡す」というのは主権を意味していることに間違いない。