ロシアの有力なニュースサイト誌「ブズグリャード」(2018年11月15日付)には、プーチン氏の真意を見事に解説している。

 「プーチン大統領が日ソ共同宣言にある『引き渡し』という言葉の意味を決めるのは、ロシアだと言っているのだ。『引き渡し』という言葉が意味するのは『土地のレンタル』なのかもしれない」

 色丹島には3000人のロシア人が定住しているが、歯舞群島には民間人は住んでいない。いわば空き地となっており、北海道の納沙布岬に隣接する島々の借地権を日本に認めて、土地代を巻き上げようというのがプーチン氏の魂胆のようだ。私たちが目指す北方領土返還の本来の姿とは大きく異なる。

 実は択捉島、国後島、色丹島には2011年以降、中国、韓国の水産関連企業が進出しており、新しい水産工場が続々と建設されている。2018年3月には色丹島にアメリカの「キャタピラー社」が二つのディーゼル発電所の建設に着手。そして9月には中国の通信機器大手「ファーウェイ」がサハリンと3島を結ぶ光ファイバー回線の海底敷設工事を完了した。このように北方領土はロシアの主権のもとで外国企業が進出し、既得権を確立している。

 このような状況下で日本が領土交渉すると、中国、韓国、アメリカが横ヤリを入れてくるかもしれない。でも、私が最も危惧するのは、シリアやウクライナへの軍事介入、さらには経済制裁で財政難のロシアが、最終的に北方領土を中国に売却する最悪のシナリオだ。実際、ネット上では200兆円という数字が飛び交っており、日本のGDPの4割ほどの額である。

 ロシアは1853年から3年間に及ぶクリミア戦争で経済的に疲弊し、アラスカをアメリカに売却した。ロシアは領土拡張に固執する一方で、経済危機に直面すると、平気で国土を切り売りして難を逃れる。
2018年9月、ロシア風クレープ「ブリヌイ」を焼くプーチン大統領(右から2人目)と中国の習近平国家主席=ロシア・ウラジオストク(タス=共同)
2018年9月、ロシア風クレープ「ブリヌイ」を焼くプーチン大統領(右から2人目)と中国の習近平国家主席=ロシア・ウラジオストク(タス=共同)
 ロシアのことわざに「必要となれば、法律なんてどうでもよいことだ」がある。ロシア政治家の中には、いざとなれば国連の決議や国際法、さらには条約を反故(ほご)にしてもよいと考える人たちがいる。プーチン氏を相手に、平和条約を締結し、領土が返還されるという楽観的な見通しは危険だ。ここは、ロシアのことわざ「オオカミと暮らすならば、オオカミのように吠えろ」で巻き返していこう。日本はプーチン政権に、もっと声高に要求を突き付けてよいと思う。