交渉では、主権を日本に渡し、施政権は当分の間ロシアが管轄する方式も考えられる。その場合、本土復帰前の沖縄方式となるが、ロシアの施政権が長期に及ぶようでは返還の意味がない。

 プーチン大統領は返還後の島に米軍基地を設置しないことを日米首脳が文書で確約するよう要求したとの情報もある。これも日米地位協定と絡んで難題となろう。

 ロシア側は引き渡しに際して、経済協力、安全保障、島民への補償など多くの条件闘争を挑むとみられ、複雑な難交渉となりそうだ。

 そもそも支持率が低下しているプーチン大統領にとって、領土割譲はリスクがある。大統領が自ら高揚させた民族愛国主義が、引き渡しの障害になりかねない。保守派のロシア人歴史学者、アナトリー・コシキン氏は「2島返還の時機は逸し、現実的に不可能だ」とコメントした。

 ロシアのネット上では、「プーチンが大統領選で公約していない年金受給年齢引き上げや日本への領土割譲を実行するのは不当だ」「1センチでも領土を譲るのは裏切り行為だ」といった返還反対の書き込みが目立つ。

 「日本と平和条約を結ぶことは、孤立脱却につながる」といった意見は少数派だ。こうした中で、90年代初期に対日政策を担当したゲオルギー・クナーゼ元外務次官は、ラジオ局「モスクワのこだま」の座談会で、「日本の四島返還論には相当の根拠があり、ロシアは歯舞、色丹を返還し、国後、択捉の帰属協議に応じるべきだ」と発言した。
墓地に設けた祭壇に手を合わせる元島民 =2017年9月、択捉島の紗那墓地 (代表撮影)
墓地に設けた祭壇に手を合わせる元島民 =2017年9月、択捉島の紗那墓地 (代表撮影)
 クナーゼ氏は在任中の92年3月、外相とともに同様の提案を打診したが、日本側は「四島返還ではない」として却下した。クナーゼ提案に沿って交渉していれば、当時の日露の圧倒的な国力格差から見て国後を含む「3島プラスアルファ」の解決が十分可能だったろう。

 政府・外務省は当時の外交失敗が今日の状況につながったことを念頭に、2島の主権確保に全力を挙げるべきだ。