「奨学金とか高いじゃないですか。借金するくらいなら、自分で稼いだ方が全然いいと思ったんで」

 ある男子学生は、親が無理して通わせてくれた理系学部の授業料、年間200万円を工面しようと、新宿の歌舞伎町でスカウトマンの仕事を始めた。街で女性に声をかけ、風俗産業へと斡旋(あっせん)する。別の大学の友人は、週1日の出勤で月収30万円を稼いでいた。「完全自由出勤」「完全歩合制でノルマなし」という条件に引かれた。これなら授業と両立できる。

 面接は雑居ビルの一室で、スーツを着たコワモテのお兄さんたちに囲まれて怖かった。「とにかく女の子に声をかけて、キャバクラか風俗店に連れて行って」と言われ、新宿へ通う日々が始まった。

 女性と話すのは好きだったので、ナンパのようなノリで声をかけ続けるのも、それほどつらくはなかった。大学の同級生からは「女性にモテる」「コミュ力が高い」と褒められるようになった。

 キャバクラ嬢を新しい店に紹介できれば、店から一件あたりいくらかの収入が手に入る。性風俗店なら、その女性が勤務し続ける限り、女性の給料の10%が彼の懐に入り続ける。月収は30万円を超えた。だが、本音は「やっぱり病みますよ」。

 「女の子の愚痴や色恋の管理とか、あとは罪悪感。ヤバい人たちとの絡みもたまにありますし。でもこれ以上稼げる仕事はないです。やりがいもあるし。でもそろそろ単位が危なくなってきたので、ちょっとキツいですね」

 信じられない人もいるだろうが、多くの学生にとって夜の世界は、奨学金に頼らず学生生活を送るための手段になっている。学費のためにキャバクラやクラブ、性風俗店などで働く大学生のほとんどは、奨学金を借りていない。そして、たいてい私立大に通っている。彼、彼女らは「自立」するために、大人の社会に依存する。いずれも「親に甘えずに」大学へ通おうとした結果である。

 ある女性は、学費のために銀座のクラブで働いたが、その目的は「クラブに来る客の中から、自分を経済的に支えてくれる人を探すためだった」という。20歳の彼女が見つけたのは59歳の会社役員。学費を払ってもらう代わりに、体の関係を提供している。

 深夜まで勤務するホステスやクラブは学業と両立できないので、「スポンサー」ができたらすぐにやめるつもりだった。還暦間近の男性とホテルで会うたびに虚しさが募ったが、最近は慣れてきたという。大学を無事に卒業し、無借金で社会に出ることが彼女にとっては何より大切だからだ。