高橋知典(弁護士)

 日本学生支援機構(JASSO)が、民法上、保証人には連帯保証人も含めた人数で等分に割った額しか支払い義務がないことを積極的に説明せずに、全額請求していたことが問題視されていますが、本来今回のような日本学生支援機構の対応に法的な問題はないと言えます。

 日本学生支援機構の奨学金制度は、法的には「金銭消費貸借契約」であり、銀行や消費者金融からお金を借りることと変わりはありません。

 金銭消費貸借契約では、支払いを確実にするために、人的な担保である保証人を付けられます。その中でも「連帯保証人」と「保証人」の2種類があり、今回はその「保証人」の取り扱いについて問題が提起されました。

 現在、保証人をつけて奨学金を借りるためには、連帯保証人(親等)1人と、保証人(4親等内の親族)1人が必要とされています。保証人は連帯保証人と違って、簡単に言えば「まずは主債務者(お金を借りた人)に請求してもらう」(催告の抗弁)ことができ、「主債務者がお金を持っている場合には、そちらから払ってもらう」(検索の抗弁)ことができるという特徴があります。こうした保証人が持つ特徴の一つで、今回問題提起されたのが「分別の利益」の取り扱いです。

 保証人が持つ「分別の利益」は、1人で借金の全部を払わなければならないのではなく、他の保証人と分担して払えばいいということです。例えば、連帯保証人1人と保証人1人がついているならば、1000万円を借りた時には、保証人は500万円を自分の負担分として払えばいいということになるのです(連帯保証人は、全額を払う必要があります)。

日本学生支援機構の奨学金を新年度から利用すべきかどうか悩む学生=2009年3月、東京都内(安田幸弘撮影)
日本学生支援機構の奨学金を利用すべきか悩む学生
=2009年3月、東京都内(安田幸弘撮影)
 しかし、債権者(お金を貸した者)は、保証人から全額の返済を受けてはいけないということはなく、保証人が「任意に払うのならば受け取っていい」ということにしています。仮に保証人が分別の利益を超えて、他の保証人分を支払った時は、保証人は、他の保証人から払ってもらうということになっているのです。

 また、本来こうした「分別の利益」は、債権者が保証人に請求した場合に、支払いをしたくない保証人側から、主張することになっています。

 このために、今回の「分別の利益」の主張について、貸した側が借りた側に「分別の利益」の主張を教えてあげるということは、通常は敵に塩を送るような行為です。厳しいようですが通常は保証人側で勉強したり、弁護士に相談したりして主張すべき事柄であり、払ってしまった保証人は、本来は主債務者か、連帯保証人に払ってもらうことになるのです。

 以上から、法的には、説明しなかったことが問題になるとは言いにくいところがあります。