2018年11月30日 16:19 公開

中国政府は29日、世界で初めてゲノムを編集した赤ちゃんを作り出したと主張している中国・南方科技大学の賀建奎准教授について、研究の中止を求めたと発表した。研究について調査も始めるとしている。

中国科学技術部は、「関係組織に対し、関連する個人の科学的活動を中止するよう求めた」と発表した。

中国衛生部は既に、賀氏の研究が「中国の法、規則、倫理的基準を深刻に違反している」と指摘。賀氏の主張内容を調査すると表明していた。

賀准教授は28日、香港で開かれたゲノム編集研究の国際会議で、HIV(エイズウイルス)に感染しないよう遺伝情報を書き換えた双子の女の子が産まれたと発表した。発表に対しては怒りの声が多く上がった。

賀氏の発表についての真偽は確認されていないが、事実だった場合、人間のゲノム編集について定められた厳格な規則に違反していることになる。

深圳市にある南方科技大学は、賀准教授の研究内容を把握しておらず、内容について調査を開始すると発表。准教授は今年2月以来、無給休暇中だったという。

賀准教授の主張

賀准教授は26日、双子の女児がHIVに感染しないよう受精卵のDNAを編集したと発表した。

香港大学で開かれた「国際ゲノム編集会議」で28日、発表後に初めて公の場で発言した准教授は、「ルル」と「ナナ」と呼ばれる双子が「正常かつ健康」に生まれたと明らかにした。今後18カ月の間、双子の成長経過を観察し続ける方針という。

賀准教授は、研究は自己資金で進めたとし、所属する南方科技大学には通知していなかったと認めた。

賀氏によると、HIV陽性の父親とHIV陰性の母親という組み合わせのカップル8組が、自主的に研究に参加した。後に1組は辞退したという。ただ、遺伝子編集をした受精卵による「妊娠の可能性がさらにもう1件」、初期段階にあるとも明らかにした。

准教授はさらに、研究論文は査読のため学術誌に提出済みだと述べたが、どの学術誌かは明らかにしなかった。また、「複数の専門家」が査読し、意見をくれたとも主張したが、その専門家の具体的な名前は挙げなかった。

何が問題なのか

賀准教授が使ったと主張する遺伝子編集技術「CRISPR(クリスパー)」は2012年に発明されたもので、科学の世界では新しいものではない。

「分子のはさみ」を使って、ゲノム上の特定の箇所を任意に削除したり置き換えたり、修正することができる技術で、一部の深刻な難病治療にすでに活用されている。

理論的には、受精卵のDNA情報を一部削除したり改変したりすることで、遺伝で伝達される重病を予防できる。

しかし、受精卵のゲノム編集について、科学界は深刻に懸念している。編集は直接生まれる子供だけでなく、未来の子孫にも影響する可能性があるからだ。

賀准教授の主張には、中国内外の多くの科学者からすぐに批判が寄せられた。

新技術の倫理に詳しい英オックスフォード大学のジュリアン・サヴレスキュ教授(哲学)は、「もし本当なら、とんでもない実験だ。遺伝子編集そのものがまだ実験的段階にあり、人生の初期や後期に遺伝的な問題が生じたり、がんが発生したりと、予想しない突然変異の問題がまだつきまとっている」と批判する。

「健康で正常な子供を、具体的で必要なメリットのないまま、遺伝子編集のリスクにさらす研究だ」

英国を含め多くの国では、生殖補助手段としての受精卵ゲノム編集を法律で禁止している。

体外受精胚(受精卵)を使った編集技術の研究は認められているが、研究後はただちに廃棄する義務がある。赤ちゃん誕生に使ってはならない。

中国科学技術部の徐南平副部長は国営メディアに対し、賀準教授の実験は中国の法律で禁止されていると述べた。中国では体外受精による受精卵を使ったヒト胚研究は、受精後14日以内の利用しか認められていないという。

(英語記事 'Gene-edited babies': China halts work of He Jiankui