平本淳也(元ジャニーズ所属タレント)

 人気アイドルグループ「関ジャニ∞(エイト)」の大倉忠義がブログで、一部の熱狂的ファンによる行き過ぎた行為について怒りを表し、波紋を呼んでいる。週刊誌報道などによると、大倉に近づいてきたファンが体当たりしたり、カバンに物を入れたりすることに加え、プライベートな食事の席で隣のテーブルにいたこともあったようだ。

 これに対し、大倉は「ストーカー行為だ」などとブログに書き込み、ジャニーズ事務所も告発もあり得るといった構えをみせている。

 とはいえ、当たり前だが、アイドルにとって「ファン」とは本来、最も大切にしなければならない存在である。だからこそ、ファンにはいつも幸せな気持ちを抱いてもらえるよう振る舞っているのだが、それを逆手に取って足を踏み外してしまうファンがいるのも事実だ。

 まずは、ジャニーズファンの現状から説明しておこう。およそ1千万人いるとされるジャニーズファンは、特定の個人やグループに限らずジャニーズを全体的に応援する人たちの総称だが、最近は個別に呼称をつけて色分けしている。

 古くは「追っかけ」や追っかけに命をかけて力(リキ)を入れる「オリキ」と呼ばれ、最近は「ジャニヲタ」と称されている。その中に特定のグループのファンの呼称もある。例えば、KinKi Kidsのファンは行儀が良いことから「図書委員」、嵐は「アラシック」、関ジャニ∞は「エイター」だ。さらに、Kis-My-Ft2については意味不明だが「俺足族(おれあしぞく)」、 SexyZoneは「セクシーガール」、King&Prince(略称キンプリ)は「ティアラ」と呼ばれている。

 そして今、問題となっているのは「ヤラカシ」と言われる、悪さをやらかす行き過ぎたファンたちだ。大倉のケースのように、個々のタレントだけの問題ではなく事務所も相当に手を焼いているのが実情である。これには「ヤラカシ対策」というファンもいて、これを監督して注意喚起を行う役割を担っている。彼らはいわゆる本当の意味での「親衛隊」である。

 僕が現役の頃は、トシ派(田原俊彦)とマッチ派(近藤真彦)しかいなかった。だが、その後の「ジャニヲタ」は、シブがき隊や少年隊、さらに光GENJIに男闘呼組、忍者となり、そしてSMAPへと、移りながら、あくまでもジャニーズ内に留まって支え続けている。それだけに「親衛隊」のようなファンと素行が悪いファンが実際にぶつかることもしばしばある。

 先に記したように、昔は一般的な「ファン」と、さらに気合を入れた「親衛隊」の2種類しかいなかったが、80年代の後半から「追っかけ」が登場し、90年代には「オリキ」になり、同じ頃から「ストーカー」とでも言うべき行為に走る過激なファンも増え始めた。
(イラスト・不思議三十郎)
(イラスト・不思議三十郎)
 つまり「追っかけ」の延長線が、ストーカーと見なされる行為に進化したのである。ただ、かつては「ストーカー」という表現がなかっただけで、大倉の悲痛なメッセージを目の当たりにした時、僕も現役時代に同様の被害に遭っていたことを思い出した。

 「入待ち」や「出待ち」は温かい応援の定番であり、これを嫌がるアイドルは少ない。だが、待つ場所によっては一大事だ。テレビ局やスタジオ、あるいはコンサート会場なら常識だが、自宅前での出入り待ちはかなりの苦痛である。

 もちろん、弁当やタオル、栄養ドリンクなどは当たり前のように渡されるので、家を出た瞬間から持ちきれない荷物を背負うことになる。ただ、こういうレベルはまだマシだ。

 だが、エスカレートすればそうも言っていられない。「待ち伏せ」は家や最寄り駅などで行われるが、それは「仕事」の行き来なら仕方がないとはいえ、駆け出しの頃に通っていた学校やアルバイト先にまで熱狂的なファン現れると、自分の周囲の人たちにも迷惑をかけかねない。これが続くと、さすがに誰だって嫌な気分になってくる。