また、ファンも待ち時間があまりに長いといらだち、あらゆる行動に打って出る。まずは、落書きだ。「大好き」とか「一生ついていく!」程度のものから始まり、「抱いてください」のほか、露骨に「キスして!」とか、「セックスしてください」などとエスカレートしていく。近所のガードレールや公園のベンチなどに名指しで書かれれば、自分のせいでご近所に迷惑をかけていることになり、帰宅すら億劫になる。そして、そこからは引っ越しの繰り返しである。

 ちなみに、家庭ゴミはすべてファンに持っていかれるので自宅近くの集積所には出さず、最寄りの役所まで持ち込むこともざらである。それだけではない。自宅のポストをのぞかれたり、郵便物を取られたりは当たり前で、はっきり言ってプライベートは何もかも奪われていく。今ではマンションにオートロックや防犯カメラも設置されているため、こうした行為は随分防げるようになった。

 これは聞いた話だが、留守中に自分の部屋に忍び込むファンもいるらしい。忍び込んだ部屋を掃除したり、食事を作って待っていたり…。ある知人のアイドルは、見知らぬ女性ファンがベッドの下に隠れていたという。

 また、ここ数年は、会員制交流サイト(SNS)がファンの行動を変えている。これによって、物理的な「追っかけ」をしなくても、効率良くお目当てのアイドルに会えるようになった。

 「今、どこに誰がいる」という情報は瞬く間に広がり、その動向は手に取るように把握できるネットワークをジャニヲタたちは持っている。行く先々で「なんでファンがいるの!?」と、驚きよりもむしろ恐怖に似た感情を抱くケースも多いらしい。

 こうしてプライバシーが失われていく心境はアイドル本人だけでなく、家族や友人にも及び、仮に恋人がいれば、それは「攻撃の対象」にもなるため、本人の精神的なダメージはどんどん増幅する。実際にジャニーズの所属タレントと「噂」になるだけでも、酷い仕打ちを受けることがままある。もし、リアルな彼女になろうものなら、その攻撃の程度は計り知れない。

 ただ、かつてと大きく変わったと感じるのは、いくら迷惑行為とはいえ、「人気者の証」とも言えるファンの言動に対して、露骨に嫌悪感を丸出しにするアイドルが増えてきたことである。本来なら大倉がブログで吐露した「そろそろ限界」は、「じゃあ、アイドル辞めろよ」と言われても仕方がない。もちろん、熱狂的ファンの迷惑行為が犯罪行為になってしまえば、当然声を上げるべきだが、その線引きはなかなか難しい。
(イラスト・不思議三十郎)
(イラスト・不思議三十郎)
 当然ながらアイドルも年も重ねる。デビュー当初は我慢できても、大倉のように大人になったアイドルが限界を感じ、憂鬱な気分になるのも理解できる。

 こうした現実を踏まえれば、むろん大倉に限ったことではないが、彼の悲痛な叫びは今現在も耐え忍んでいるアイドルたちの「代弁」でもあり、自分のことだけでなく、仲間や同業者の気持ちを察しているからこそ出た発言なのだろう。

 勇気を持って出したであろう大倉のメッセージが、行き過ぎたファンの迷惑行為の歯止めになればいいのだが。