河西秀哉(名古屋大准教授)

 「国費で賄うことが適当かどうか、これは平成のときの大嘗祭(だいじょうさい)のときにもそうすべきではないという立場だったわけですけれども、そのころはうんと若かったですし、多少意見を言ったぐらいですけれども。今回も結局、そのときを踏襲することになったわけですね。もうそれは決まっているわけです。ただ、私として、やはりこのすっきりしない感じというのは、今でも持っています」

 秋篠宮文仁親王は2018年11月30日の誕生日に際しての記者会見で、大嘗祭についてこのように発言し、大きな問題となった。

 政府は大嘗祭の費用について、今回も平成の時を踏襲し、国費から負担することを決めている。それは、平成の大嘗祭に際して、多くの批判や疑義が寄せられ、訴訟にまで発展したからであった。それゆえ、これに関する議論を今回も重ねれば、やはり国民的議論が巻き起こる可能性がある。

 そのため、政府の「天皇陛下の御退位及び皇太子殿下の御即位に伴う式典準備委員会」は議論をほとんど行わず、できるだけ軋轢(あつれき)が生じないように、前例踏襲という形で押し切ろうとしたのである。それを秋篠宮が問題視した。

 なぜこれが問題になるのか。日本国憲法第4条は「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」と規定している。天皇は政治に関与することができないのである。

 つまり、天皇は政治的な発言もできない。これは、大日本帝国憲法下において太平洋戦争の敗戦にまで至った経緯を考えるとき、天皇の権限を利用してそうした惨禍に再び導くことがないよう、考え出された規定であった。

 とはいえ、憲法では「天皇」としか書かれていない。秋篠宮は「皇族」ではあるが、「天皇」ではない。日本国憲法や皇室典範には皇族の行動に関する条文は全くなく、どのような行動をするか、何が規制されるか、法的には規定されていない。

 それゆえ、日本国憲法第4条が直接的に秋篠宮には適用されないものの、戦後の歴史の中で、皇族は天皇の「象徴」規定の理念に準ずる形で行動してきたように思われる。戦後直後は、昭和天皇の弟である三笠宮などが政治的発言をすることは多々あった。

 しかし、それは社会的に問題となり、次第に皇族が自身の行動を自律的に規制し、社会もそれを求めていったように思われる。その意味では、政府が一度決めた方針への異議を唱えた今回の秋篠宮の発言は、そうした流れとは反しているのではないか。
53歳の誕生日を前に、紀子さまと共に記者会見される秋篠宮さま=2018年11月22日、東京・元赤坂の宮邸(代表撮影)
53歳の誕生日を前に、紀子さまと共に記者会見される秋篠宮さま=2018年11月22日、東京・元赤坂の宮邸(代表撮影)
 しかも、秋篠宮はこの後、「皇嗣」となって皇位継承順位第1位となる立場である。次に大嘗祭を執り行う可能性がある。もしそのとき、今回の発言を踏まえて、時の政府が方針を変えてしまったらどうするのか。それは、秋篠宮の発言が政治を動かしてしまったことになる。