2018年12月04日 12:25 公開

仏南部マルセイユで1日に起きた燃料税をめぐる抗議行動で、80歳の女性が催涙ガス弾に当たり死亡していたと現地メディアが報じた。

抗議行動の発生場所近くにあるアパート在住のこの女性は、窓のシャッターを閉じようとしていたところ、催涙ガス弾が顔に当たった。

現地メディアによると、女性は病院に運ばれたものの、手術中に死亡した。死因はショック死だったという。

2週間以上前にデモが始まって以降、抗議行動をめぐって3人が死亡したと仏警察は2日に発表している。

クリストフ・カスタネール仏内相は、「ジレ・ジョーヌ」(フランス語でイエロー・ベスト、黄色いチョッキの意味)として知られる運動に対する広い支援を示すため、仏全土で約13万6000人が抗議行動に参加したと発表した。

フランスでは、全車両が視認性の高い蛍光黄色の服を搭載するよう法律で義務付けられている。この黄色のベストを着た人たちが道路で抗議をしているため、抗議行動は「ジレ・ジョーヌ」と呼ばれる。抗議者は、ディーゼル燃料に対する税金の急速な増加に不満を示している。

ただし、燃料税の増税をめぐり始まった抗議行動は、生活費全般の高騰への怒りとなって膨れ上がっている。

パリのアンヌ・イダルゴ市長は仏メディアに対し、1日の抗議行動は300万ユーロから400万ユーロ(約3億8600万円から約5億1500万円)相当の損害を生んだとの推計を明らかにした。

「ジレ・ジョーヌ」運動の一部代表者は4日にエドゥアール・フィリップ仏首相と会談する予定だったが、運動側が会談を中止した。

パリで取材するヒュー・スコフィールドBBC特派員によると、会談に向けて準備していた運動の穏健派メンバーが、過激派メンバーから非難されたため、会談を中止した。穏健派は殺害脅迫も受けているという。

「ジレ・ジョーヌ」運動の広報担当者、クリストフ・シャランソン氏は3日、政府に退陣を求めた。シャランソン氏は仏政府が、「(元仏軍トップのピエール・)ド・ヴィリエ将軍のような真の司令官」に置き換えられるべきだとした。

ド・ヴィリエ将軍は元仏軍統合参謀総長で、国防予算の削減をめぐりエマニュエル・マクロン仏大統領と衝突して辞任した。

政府の反応は

マクロン大統領は3日、治安対策を話し合う緊急協議を開いた。協議に参加した閣僚らは、どんな選択肢も除外していないものの、国家非常事態宣言の発令は議論していないと述べた。

フィリップ首相も3日、野党指導者と会談した。

首相と会談した極右「国民連合」のマリーヌ・ル・ペン党首は、自国民への発砲を命令するこの50年で初めての仏大統領にマクロン氏がなる可能性があると警告した。また、燃料税の増税中止、ガスと電気価格の引き下げ、最低賃金や最低年金価格の上昇凍結終了をマクロン氏は実施すべきだとル・ペン氏は述べた。

週末の抗議行動で商業が受けた損害を評価するため、ブルーノ・ル・メール仏財務相は業界団体の代表者らと会談した。

「影響は深刻で、現在も継続している」とル・メール氏はAFP通信に話した。

一部の小売業者は、デモ中に売上が約20パーセントから40パーセント減少し、一部レストランも約20パーセントから50パーセントの売上を失ったと、ル・メール氏は付け加えた。

抗議行動に収束の兆しは見られるのか

抗議行動は3日も続いた。

マルセイユ近郊の港湾都市フォス=シュル=メールでは、大規模燃料貯蔵庫への道路を「ジレ・ジョーヌ」約50人が封鎖した。仏全土のガソリンスタンドでは、ガソリンが底をついている。

仏北西部ブルターニュ地方では、ガソリン車の運転手が購入可能なガソリン量に規制が導入された。

仏全土の中等学校に在籍する生徒約100人は、教育改革と試験制度改革に反対するデモを行った。

3日には、社会保障制度改革と医療制度改革に反対し、私立施設に勤務する救急車運転手もデモを実施した。改革で自分たちの仕事も影響を受ける可能性があると運転手らは主張している。

数十台のトラックが集まり、パリのコンコルド広場から仏国民議会(下院に相当)議事堂のブルボン宮殿までの道路を封鎖した。

抗議者の1人はロイター通信に対し、「(マクロン氏の改革は)我々を服従させ、我々の会社を破壊する。我々は確実に、人を解雇しなければならなくなる」と述べた

デモをした学生グループや医療業界の労働者が、「ジレ・ジョーヌ」運動と直接的に協調しているのかは明らかになっていない。

運動に参加していた20代男性1人が、重体となり仏南部トゥールーズの病院に入院している。


<解説>1968年以来最悪の抗議行動、仏メディアに衝撃――BBCモニタリング

「ジレ・ジョーヌ」の抗議行動がパリ市街で暴動を起こし、自動車を燃やし、商店で略奪行為を働いたことで、仏主要メディアに衝撃と怒りが走っている。

左派寄りの論調で知られる仏日刊紙リベラシオンは、「1968年5月に起きた出来事(5月革命)以来、最も暴力的な集会を、パリは間違いなく経験している」と書いた。抗議行動の参加者が、国家主義者や極右の学生団体から極左の民兵や無政府主義者まで多岐にわたっている「不均一性」も同紙は指摘している。

中道右派の日刊紙ル・フィガロは「国家的危機」とタイトルのついた社説で、12月1日が「国家が共有する傷であり続けるだろう」と書いた。ル・フィガロは「許し難い暴力の爆発に直面し」、国全体が「国家の崩壊を目撃している感覚を抱いた」としている。

日刊経済紙レ・ゼコーは一面見出しで、エマニュエル・マクロン仏大統領が「大混乱に対峙している」と書いた。

レ・ゼコーは「1日の暴力的光景を受け、仏大統領府は未だに、強い政治的返答を模索している」と伝えた。

中道左派の日刊紙ル・モンドは「大きな政治的危機」と伝え、アルゼンチンから帰国したマクロン大統領はすぐ、「暴力の現場」となったパリ中心部の凱旋門(がいせんもん)に向かったと書いた。


(英語記事 France fuel protests: 80-year-old woman killed in Marseille