秋篠宮殿下は、大嘗祭を「内廷会計(内廷費)」で賄うべきだとおっしゃったが、内廷費は皇室経済法施行法で規定された定額が毎年、国庫から支出されており、その額はわずか3億2400万円に過ぎない。この金額から、皇室の恒例祭祀を支える20人余の掌典(しょうてん)職など内廷職員の人件費も支出されている。その使い道は、ほぼ決まっているのである。そのどこから大嘗祭の費用を工面できるとお考えなのであろうか。

 殿下は「大嘗祭は絶対にすべきものだ」とおっしゃっている。大嘗祭は毎年恒例の新嘗祭(にいなめさい)とは明確に異なる。その区別を踏まえて皇位継承儀礼にふさわしい形で行おうとするならば、内廷費の全額を充てても到底足りない。

 その点で、大嘗祭の「本来の姿」についても、いささか誤解されている節がある。大嘗祭の古儀の在り方については、貞観の「儀式」や「延喜式」に詳しい規定がある。それらを見れば、大嘗祭がいかに壮大な国家・国民を挙げての祭儀であったかが分かる(拙著『天皇と民の大嘗祭』(展転社)参照)。

 なお、内廷費は「天皇のお手元金」という性格を持つ。そうであれば、いくらご近親であっても、その使途について内廷「外」の方が口を挟むのは、少し筋が違うのではないか。

 宮内庁の山本信一郎長官に対して「聞く耳を持たなかった」と極めて強く非難されたのも、殿下の品位のためには、望ましいことではなかった。改めて言うまでもなく、宮内庁長官は大嘗祭費用の出どころを決定するような国政事項に関与すべき立場にはない。政府の一員として、その方針に従っているに過ぎないのである。

 今回の秋篠宮殿下の大嘗祭に関するご発言は、記者の関連質問にできるだけ親切に答えようとされる中で出てきたものだ。殿下が「もう、それ(大嘗祭への宮廷費の支出)は決まっているわけです」とおっしゃられているように、特に政治的効果を意図されたものでないことは明らかだ。
皇居・東御苑に設営された大嘗宮(だいじょうきゅう)=1990年11月撮影
皇居・東御苑に設営された大嘗宮(だいじょうきゅう)=1990年11月撮影
 そのお考えの基礎にあるのは「税金の使い方は厳格に」という国民への深い思いやりだろう。誠にありがたい。

 ただし、ご発言の一部については、ご自身の重い立場に照らして十分に慎重なものだったとは断言しにくいのではあるまいか。

 以上、私なりの感想をあえて忌憚(きたん)なく述べさせていただいた。妄言の数々、ご無礼の段は平にお詫び申し上げる。