① 露出の多い服を着ている女性は痴漢されたい(されても仕方ない)人である(女性の性的挑発)。
② 最初は嫌がる女性が多いが、痴漢されているうちに多くの女性は気持ちよくなってくるものだ(願望の投影)。
③ ちょっと触れるぐらいなら気づかれていないし、もっとひどいことをやっている奴はたくさんいる(比較による過小評価)。
④ こちらをチラチラ見ている女性は、もしかしたら痴漢されたいと思っているのではないか(自己の願望の投影)。
⑤ 女性は無意識のうちに痴漢されたいという願望を持っている(女性の被痴漢願望への過度な期待)。
⑥ 露出の多い女性は性欲が強いはずだ(偏った決め付け)。
⑦ 隙が多い(寝ている・飲酒・終電など)女性は触られても仕方がない(自己責任論)。
⑧ 今週も1週間仕事を頑張ったから、自分は痴漢しても許される(自己報酬型)。
⑨ こんなに惨めな気分になったのは全て女性のせいだ。だから痴漢をしても許される(被害妄想的仕返し)。
⑩ 女性は男性から痴漢されることで性的満足を得るものである(暴力的な性の容認)。
⑪ 痴漢の事件の中にも、美人局(つつもたせ)のように捏造したものもあるから、少しぐらい痴漢しても許される(すり替え)。
⑫ 相手から近づいてきたから痴漢してもいいだろう(加害者のパーソナルスペースの歪み)。
⑬ 痴漢の多い埼京線だから、やってもいいだろう(環境への責任転嫁)。
⑭ まだ目標人数に達していないから、もう一人ぐらい触ってもいいだろう(ノルマ的思考)。
⑮ 10人に1人は痴漢されることを望んでいるのではないか(確率的思考)。
⑯ 自分も被害にあったことがあるから、時々痴漢してしまうことは仕方ない(加害者における被害者感情)。
⑰ 妻とは随分セックスレスだから、痴漢に走っても仕方がない(妻への責任転嫁)。
⑱ スイッチが入り、気づいたら触ってしまっていた(脳の不随意運動)。
⑲ 「痴漢は犯罪です」というポスターを見て、自分のやっていることは少し触るだけで痴漢ではないから犯罪ではない。
⑳ 女性専用車両に乗っていない女性は、痴漢されたいと思っている(願望の投影)。


 いかがだろうか。この病理の一端が垣間見える。

 何度も言うが、彼らはこのように現実を自分の都合よく捉えながら痴漢行為を繰り返す。彼らの頭の中には、怖くて抵抗できない、恐怖で身動きできない女性は痴漢「OK」のサインである。体を震わせていれば感じていると捉え、ふらついて近くにきたら自分から体をすり寄せてきたと捉え、にらんできたらアイコンタクトと捉えるような歪んだ認知である。

 また、痴漢常習者は被害者について、よく勉強をしている。つまり、おとなしそうで泣き寝入りしそうな人を選び、多少痴漢をしても相手が被害を訴えることは稀で、通報するのも10人に1人ぐらいであるという警察庁の調査「電車内の痴漢防止に係る研究会の報告書」(2011)も頭に入っている。

 また、仮に逮捕されたとしても、初犯で容疑が「迷惑防止条例違反」の場合、実刑になることはなく、刑事事件に強い弁護士に頼めば示談にすることも可能だ。法律や刑事手続きについても熟知しているし、情報収集に余念が無い。ということから、実は常習者の場合、痴漢で人生が終わるわけではないのである。

 ここまで、痴漢常習者の頭の中について、その一端を見てきた。果たして、彼らは防犯カメラ設置で、その「生きがい」ともいえる問題行動をやめることができるだろうか。

 仮に、専門治療以外のハード面で痴漢の再犯防止を考えるのなら、防犯カメラの設置だけでなく、被害を訴えやすいようにするためのアプリを活用した防犯ブザーや、満員電車解消のための日本人の働き方改革を考えたほうが現実的である。特に後者は、サラリーマンの出勤時間を変えることで企業側に何らかのインセンティブを与えることができれば、メンタルヘルスにもいいのではないだろうか。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
 痴漢問題に対して、私たちができることはその正確な実態を理解することだ。痴漢問題を社会問題と捉え直し、他人事(ひとごと)ではなく自分事であると一人ひとりが当事者性を持つことこそ、今必要なことであると考えている。