阿部等(ライトレール代表取締役社長)

 2009年にJR東日本の埼京線で「痴漢防止」を目的に防犯カメラが導入されました。また、今年6月に起きた新幹線殺傷事件の対策として、JR東日本が新規導入車両のすべてに防犯カメラを導入するなど、問題が起こる度に電車内の防犯カメラは増えています。これは駅構内も同じです。

 一方、鉄道内の防犯カメラ増加に対し、記録はできても抑止効果はあるのか、監視社会が広がるのではないか、といった懸念の声も聞こえます。また、鉄道会社が「無策」と責められるのを恐れ、根本的な対策が不十分なまま、防犯カメラを設置している面もあります。

 例えば、痴漢防止には満員電車の解消が不可欠ですが、これを実現するにはコストも時間もかかって難しいので、せめて防犯カメラを設置しているとの見方もあります。私は、そういった批判をするつもりはなく、以下、前向きなお話をしたいと思います。

 鉄道の車両故障・設備の保守不良・従事員の取扱いの誤りなど内部原因による事故は、1872年以来、150年近い日本の鉄道の歴史の中で、痛い思いをする度に対策を練ってきました。

 そういった先人たちの努力により、一度に何十人も何百人も亡くなるような内部原因による事故は今後まず起きないでしょう。そして、さらに高度の対策として、地下鉄サリン事件、新幹線での焼身自殺や無差別殺人などの「テロ」を防ぐ、あるいは被害を小さくする努力が求められています。

 外部から持ち込まれる犯罪は、仕方ない面もあるものの、それでもできる限りの手は打とうと、大きな事件が起きるたびに手荷物検査の話が必ず出ます。ですが、莫大なコストを要し、場所もとり、利便性も下がります。
JR東海は新幹線での不測の事態に備えた訓練を実施した=2018年8月、静岡県三島市(吉沢智美撮影)
JR東海は新幹線での不測の事態に備えた訓練を実施した=2018年8月、静岡県三島市(吉沢智美撮影)
 中国では、都市間鉄道のテロ対策は空港と同レベルで、都市鉄道の全駅には荷物検査設備と2人以上の検査員が配置されています。でも、上海地下鉄では、ほとんどの乗客が無視して通り過ぎ、ましてや悪意を持っている人がそんなところを通るはずもなく、コストのわりに効果があるのか怪しいのが現実です。

 ただし、イノベーションにより、通り過ぎる人と荷物を無人で照査してナイフや爆弾などを見つけられるようになったら、設置すべきです。