従来の手荷物検査より、設置が進んだ防犯カメラをより有効活用する方策を考えた方が得策です。そこで、AI(人工知能)によるディープラーニング(深層学習)と、カメラのネットワーク化を提案しています。

 画像解析技術とAIを活用し、不審な行動をしている人をシステム上で見つけ出すことは実用レベルになっています。同じ場所を行ったり来たりする、大きな荷物を置いて立ち去る、服装や所持品がおかしいなどです。

 さらに、車上と駅構内のカメラをネットワーク化することで、マークした人をカメラで順々に追跡するようにできます。突発的に犯行に及ぶような人がどういう行動をとるのかも、ディープラーニングを重ねることで確度高く見つけ出せるようになるでしょう。「防犯カメラがある」ことによる抑止効果だけでなく、犯罪や事件が起きる前に見つけ出して取り押さえることが重要です。

 一方、監視社会への懸念に対する配慮も欠かせません。防犯カメラで撮影された映像が悪用されるかもしれないという心配は当然です。そのために、管理する会社や人が善人ばかりではないという前提に立ってシステムを作らなければいけません。

 銀行では、一万円札を大量に扱う職場で、行員が悪事を働くかもしれないという前提で監視の仕組みを入れています。それでも時々、着服事件が起きるわけです。

 だからこそ、防犯カメラで撮影され蓄積されたデータを悪用したりする人が、社会を混乱させたり個人の人権を侵害することのないような、具体的な仕組みを構築し、さらに多くの人たちへの利益を提示した上で、社会の合意を得なければいけません。
 
 例えば、撮影された映像の保存期間を定める、複製できないようなコピープロテクトをかけるなど、システム上の対策も盛り込みます。
※画像はイメージです(GettyImages)
※画像はイメージです(GettyImages)
 社会の合意を得ることは、鉄道会社だけでなく社会全体の話ですから、その整理は国の役割です。国土交通省が警察庁と連携し、国民の生命と財産を守るための得策だと示し、かつ悪用されない仕組みを導入することをきちんと説明することで検討が進みます。そして日本は、技術力のあるメーカーがサポートし、国民の賛同を得て導入するというプロセスを踏める民度の高い国だと信じています。

 国民の間で、防犯カメラに対する違和感や嫌悪感はかなり薄れてきたと思います。さらに、そのAIシステムにより、車内や駅に忘れ物をしたときに教えてくれたり、体調が悪くて倒れた人がいたら救急車が自動手配されたり、さらには傍若無人の輩(やから)を警察に通報してくれるようになります。