高速道路のサービスエリアのトイレの個室にまで、忘れ物センサーが導入され始めています。そういったメリットも周知しつつ、「監視社会への不安」を解消できるよう、一つずつ丁寧にメリットとリスクヘッジを伝えていきたいです。

 さらに、早期に導入するには費用負担の整理も不可欠です。AIシステムの導入に伴う投資と経費増は、トラブルの低減などによる鉄道会社の収益増と経費削減だけでは賄えません。

 社会全体の安全・安心のために一定の税金を投入することは、丁寧な説明により人々の理解と賛同を得られると考えます。費用分担は、国・自治体・鉄道会社で3分の1ずつくらいが適切でしょう。鉄道会社の負担分として、運賃の値上げも一策です。

 2020年の東京五輪まで2年を切った今、テロ対策をはじめとした防犯対策は重要なテーマです。ITと通信システムの高度化により、私がJRの社員時代に実体験した人海戦術ではなく、システムの力で不安要素をピックアップし、要所では人が判断・行動する効果的な防犯システムを開発できる時代になりました。

 日本以上にテロに困っている欧米各国には、すさまじい数の防犯カメラが設置されていますが、AI活用やネットワーク化は進んでおらず、費用のわりに効果が不十分と感じます。東京五輪は世界にアピールできるチャンスであり、このシステムで万全の安全を達成すれば、世界中が同じシステムの導入を望むでしょう。
株式会社ライトレール代表取締役社長・阿部等氏
株式会社ライトレール代表取締役社長・阿部等氏
 世界的にテロから身を守りたいという機運が高まる中、日本の治安が良いことは、それ自体が日本に訪れる一つの要因です。AIシステムを導入できれば、より大きな財産になり、かつ日本発の技術として世界に広められます。いや、世界一の鉄道を持つ日本が広めなければいけません。(聞き手/専修大学・大江茉那、小松幸男、山田風香)

 あべ・ひとし 株式会社ライトレール社長。昭和36年、東京都生まれ。東京大工学部都市工学科修士終了。JR東日本にて鉄道の実務と研究開発に17年間従事。平成17年にライトレールを創業し、交通計画のコンサルティングに従事。著書に東京都の小池百合子知事が公約に掲げた「満員電車ゼロ」のベースとなった『満員電車がなくなる日 改訂版』(戎光洋出版)。