小田桐誠(ジャーナリスト)

 NHKの看板報道番組『ニュース7』のMCを務める鈴木奈穂子アナが突然休養し、朝の報道番組『おはよう日本』のチーフプロデューサーが盗撮で摘発された。

 さらに、札幌放送局ディレクターが、オウム真理教の後継団体主流派「アレフ」に関する取材をめぐり、住民にインタビューした音声ファイルがダウンロード可能なURLを誤って「アレフ」に送信した。このように最近、NHKは首をひねりたくなる事態や職員の犯罪・不祥事が相次いでいる。

 まず、10月16日に突然画面から消えた鈴木アナだが、その後妊娠中の体調不良であることが分かり、11月5日から復帰した。NHK、民放問わず報道・情報番組のMCが夏休みに入る、あるいは数週間休養する場合、最近ではその旨を本人または、代わって務める者が視聴者に伝えることが当たり前になっている。

 今回は何の説明もなかったことから「入院でもしたのか」「上司にパワハラ・セクハラを受けたのではないか」などといらぬ憶測を呼ぶことになった。

 妊娠であればおめでたいことであり、本人が「プライベートなことなので」と番組での説明を固辞しない限り、何も隠し立てするようなことではない。アナウンス室長や『ニュース7』の部長、チーフプロデューサーとどのようなやりとりがあったのか、なかったのか定かではないが、報道局のある職員はこう語る。

 「時計代わりにもなっているNHKの看板番組ですからね。ちょっとした読み間違いがあっても、視聴者から局へ電話がかかってきます。そのプレッシャーは半端ではないと思います。最近下がり気味の視聴率も含め、それらの重圧を和らげるのが上司の役目なのですが、MCや部下の表情よりも上やその裏に控える首相官邸の顔色をうかがう『ヒラメ管理職』が増えています。コミュニケーション不足というか報告・相談をしにくい雰囲気が漂っていますよ」

 「ヒラメ管理職」増殖中とのことだが、10月25日には、『おはよう日本』のチーフプロデューサーが、京王井の頭線の下北沢駅(東京都世田谷区)のエスカレーターで、20代女性のスカートの中にスマホを差し入れたとして、都迷惑防止条例違反容疑で逮捕された。

 「盗撮行為は間違いない」と容疑を認めたという彼は、中央大法学部卒業後、2000年にNHKに入局し青森、松山放送局を経て、今年6月から『おはよう日本』のチーフプロデューサーに着任したばかりだった。逮捕容疑ではないが、番組スタッフにとっても文字通り「迷惑」な話である。

 盗撮・痴漢などの性犯罪は薬物に次いで依存症率・再犯率が高く、局内からは「これまで捕まらなかっただけで、前科があるのではないか」との声も上がる。チーフプロデューサーは逮捕2日後に釈放され、その後不起訴処分となった。NHKは「社会的信用を大きく損なった責任は重い」として停職3カ月の懲戒処分を発表したが、今後の行動にも注意を払わなければならないだろう。
NHK放送センター=東京都渋谷区神南(宮川浩和撮影)
NHK放送センター=東京都渋谷区神南(宮川浩和撮影)
 そして、NHKにとって札幌放送局で発覚した取材音声誤送信も頭の痛い問題である。同放送局のディレクターは11月1日、前月に取材した住民インタビュー6人分、約2時間半の音声の文字起こしを委託業者にメールで依頼した。その際、同時に送ろうとした同僚のアドレスの頭文字が、アレフ広報担当者のものと同じで、誤って送信先に加えてしまったという。

 ファイルの送信には局内システムを原則使うことになっているが、ディレクターは一般向けのものを使っていた。内規違反になるだけに何らかの処分は免れない。一方、インタビューには、身元が特定される可能性がある内容も含まれているだけに、取材に協力した住民はアレフの反応が気掛かりだろう。この面でもNHKは謝罪以上の何らかの対応を迫られることになろう。