通常、テレビ放送のレギュラー出演の場合は、正式な契約書を交わさないケースがほとんどである。しかしながら、声優や俳優、歌手、芸人などの「実演家」と呼ばれる人たちには法律上、「著作隣接権」という固有の権利が与えられていている(著作権法第89条以降に規定)。

 要するに、これは演技や演奏、歌や芸などは、実演家にとって生活の糧を得る「飯のタネ」であり、それはいかなる者であっても実演家本人の許諾なしに勝手に使用することはできないという権利である。

 この著作権法の中で、実演家は「自らの権利を専有することができる」と規定されているが、例外的に「ワンチャンス主義」(映画等における録画権は最初の収録時にのみ発生し、その後の二次利用については権利行使できない)を認めるケースもある。しかしながら当然、社会正義を実現するための法律である以上、信義誠実が原則であり、実演者本人の意に反しない事が大前提になる。

 嘘をついて許諾させたり、だまして収録したり、特則(その他の約束)があったりした場合は、法律的に契約の解除や無効となる場合もある。

 例外や実務的な法律論になると、この場ではとても書ききれないので、それはそれとして筆者の場合、正式な契約書は交わしていなかったが、放送用の録音音声使用しか許諾していなかったのは事実である。むろん、それ以外で筆者の音声を使用する場合にはその都度、確認が必要であるとも通知していた。

 これは、『おじゃる丸』も例外ではない。事務所が管理している個別の契約書等を見ていただければ分かりやすいが、出演契約ごとに使用の範囲を明記し、それ以外の使用については「その都度許諾が必要である」と明記している。

 当然ながら、本編放送とは全く異なるケースへの音声使用が、出演契約に暗黙的に含まれるなどということはあり得ない。つまり、NHKエンタープライズ側は「『おじゃる丸』の人形に筆者の音声を無許諾で使用した(これは憶測ですが、おじゃる丸本編放送用音声のどこかを抜いて流用した、もしくは筆者をだまして録音したものを無許諾で使用した)」ということになる。
 
 その後、第3シリーズの収録が終わって間もなくして、突然NHKエンタープライズとアニメ制作会社社長の連名、その他キャスティング会社N社等から契約解除の通知が事務所に届いた。その内容は以下の通りであった。

 「3期分までを創世記と位置づけ一区切りし、4期以降で新しいおじゃる丸の創造に挑戦することになりました。このため、初心に返って、作品内容はもちろんスタッフキャストを再構築することになりました。その一環としてキャスティング業務を今までのN社ではなく新たな音響会社に委託し、おじゃる丸役も新規に起用することにしました」
※画像は本文と関係ありません(GettyImages)
※画像は本文と関係ありません(GettyImages)
 ちょっと待ってほしい。そんな話は第3シリーズの収録終了時にも一切聞かされていなかった。まったくの寝耳に水である。事実、第4シリーズが始まってみると、『新おじゃる丸』とはいうものの、スタッフ等の変更は何もなく、変わったのは筆者だけだったのである。