コーチに暴力を受けたはずの女子選手が「パワハラだとは感じていない、コーチを辞めさせないでほしい」と訴え、むしろコーチを処分した日本体操協会から「パワハラを受けた」と告発した──体操リオ五輪代表の宮川紗江選手(18)をめぐる騒動は、8月29日の会見であらぬ方向に飛び火した。

 宮川選手が告発した相手は、日本体操協会副会長の塚原光男氏と、妻で女子強化本部長の千恵子氏。2人に呼び出され、千恵子氏から「(暴力を認めなければ)五輪に出られなくなる。私なら100倍教えられる」などと言われ、「怖かった」と主張している。

 塚原氏といえば、五輪で5つもの金メダルを獲得したレジェンドで、同じく元日本代表の千恵子氏とともに、長く体操界のトップに君臨してきた。

 だが、実は過去にも、塚原体制に対する選手の不満が爆発したことがある。体操協会の関係者が明かす。

「塚原さんが女子競技委員長、千恵子さんが女子ナショナル強化部長をしていた1991年の全日本選手権で、女子選手が47人棄権するという大量ボイコット事件があったんです。『2人が指導する朝日生命体操クラブの選手たちだけ、採点が他の選手に比べて甘すぎる。審判員を代えてほしい』と訴えたんです。このボイコットを受けて、塚原さんは一時、委員長辞任に追い込まれました」

 当時の報道を見ると、〈いずれも「塚原委員長に近い人脈の審判ばかりだ」〉〈あるコーチは「審判に不満をいうと、執行部から『あんた、そんなことをいったら、点が伸びないよ』と言われた」と話していた〉(いずれも1991年11月4日付朝日新聞)など、まるで日本ボクシング協会の“奈良判定”を彷彿とさせるエピソードが並ぶのだ。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
「塚原夫妻はその後すぐに復権し、一時は朝日生命体操クラブの選手で女子の日本代表が占められるほどでした。ただ、近年は朝日の選手層が薄くなり、夫妻は焦って強引なスカウトをしていた。昨年の世界選手権で女子初の金メダル(ゆか)を獲った村上茉愛(日体大)もしつこく勧誘されて、断わったようです。今回の件は、ついにそうした強引さが明るみに出たということではないでしょうか」(同前)

 まさか東京五輪で選手がボイコットという事態だけは避けてもらいたい。

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