長田渚左(ノンフィクション作家)

 「スポーツ界は今年、問題が山積ですね」と、言われることが多い。

 ニュースやワイドショーがせっせと取り上げるので目立っているが、別に今年が多いわけでなく、むしろ今まで面(おもて)に出なかった問題が露呈されているに過ぎない。

 各々の問題に通底しているのは、パワーハラスメントである。

 1月のレスリングに始まり、5月のアメフト、7月のボクシング、そして8月の体操。

 今年、まだ春が浅いころ、伊調馨選手が「パワハラがあって、思うように練習ができない」と悲痛な声を挙げたとき、私はテレビで「レスリングに限らず、他の競技団体でもいろいろ聞きます。思い切って選手たちも言いたいことを言って、外に膿を出した方が2020へ向かっては良いはずです」と述べた。

 ただし、アメフト界の暴力強要がつまびらかになろうとは思っていなかったが…。

 しかし、この一連のことを広角で眺めてみると、日大アメフト問題の加害者であり、同時に被害者である選手も、今回の体操の宮川紗江選手も実名で顔を出して、会見をしたことに心から声援を送りたい。

 特に体操の宮川選手の発言は注目すべきだと思った。

 彼女は二つのことをテーマにしている。一つは体操協会上層部の一新と改革、もう一つは自分にとって2020年東京五輪でも一緒にやっていきたいと願う、速水佑斗前コーチに暴力への気づきを促したことだ。
2018年8月、会見に臨む、世界選手権女子日本代表候補の宮川紗江(右)。速見コーチの暴力を認めた上で、日本協会・塚原女子強化本部長からの「パワハラ」もあったと訴えた
2018年8月、会見に臨む、世界選手権女子日本代表候補の宮川紗江(右)。速見コーチの暴力を認めた上で、日本協会・塚原女子強化本部長からの「パワハラ」もあったと訴えた
 彼女はコーチの暴力を自分のことが憎くてやっていたことではないと十分に知っている。暴力はあったと認めながらも、今後も一緒にやっていきたいコーチだと初めから言っていた。