熊野英生(第一生命経済研究所首席エコノミスト)

 2025年に大阪が万博の開催地になることが決まった。身近なところでも、大阪出身者が「万博開催、おめでとうございます」と言われて、「どうもありがとうございます」と応じる姿を見かける。お祝い事に水を差すつもりはないが、万博が期待された効果を発揮するかどうかはまだ不確実性の中にあると考えられる。

 むしろ、当初から経済効果は約2兆円という風に確定した恩恵があると考えず、それを下回るリスクはあるし、努力次第で2兆円を超えることもできると柔軟に捉えておいた方がよい。

 本稿では、経済効果2兆円という見通しを積極的に考えることの材料と考えて、大阪万博の問題に隠れている思惑について検討してみることにしたい。

 筆者は、なるべくテクニカルな議論を避けて、3つの点を焦点に据える。(1)2800万人の来場者数の前提、(2)カジノの思惑、(3)大阪に求められる経済効果の3つである。なお、筆者は大阪万博の開催に反対しているわけではなく、相応の負担を自治体や地元企業が負うのだから、もっと多面的に検討した方がよい、と言いたいのである。誤解のないように記しておきたい。

 まず、想定来場者数が2800万人とされている点である。この数字は大きすぎないか。恐らく、比較して考えられたのは2005年の愛知万博の2200万人であろう。これは約半年間の来場者数である。2025年は、愛知万博を約3割上回る目標となっているのだろう。

 しかし、問題は万博というイベントが2800万人もの人数を引きつける魅力を打ち出せるかどうかである。グローバル化した現代において、万博というイベントはやや古くなっている。他の先進国が開催地に手を挙げない理由もこの辺りにあるだろう。
1970年当時の大阪万博会場=大阪府吹田市(共同)
1970年当時の大阪万博会場=大阪府吹田市(共同)
 1970年の大阪万博の思い出とうっかり重ねて考えてしまうが、私たちは当時よりもはるかに豊かになっている。従って、海外から出展してくるパビリオンの催し物が人気を集めるためには相当知恵を絞らないといけない。2800万人は、リピーターを相当数期待している。インバウンドも、わざわざ多額の費用をかけて来日するのだから、事前に評判を調べてくるだろう。高度に情報化された現代に、わざわざ万博の場で体験できるものを思いつくのは容易ではない。