筆者はミクロ経済学を考えるときには、大阪大の八田達夫招聘教授の『ミクロ経済学』(Ⅰ&Ⅱ、東洋経済新報社)と、日銀の岩田規久男前副総裁と明治大の飯田泰之准教授による『ゼミナール経済政策入門』(日本経済新聞社)を常に参照している。特に、前者は具体的な事例を元にしているので使い勝手がいい。

 これに日本の場合は、官僚の力が強いので、嘉悦大の高橋洋一教授の一連の著作が具体的な政策論を書く上で必備となる。「ヒックスの楽観主義」も八田氏の『ミクロ経済学』に詳細な解説がある。

 効率化政策に代替する政策は2種類ある(八田『ミクロ経済学』Ⅱ)。一つは既得権の利害に配慮する既得権保護政策である。加計学園問題で明らかになった文科省の獣医学部規制がそれである。しかも、文科省の場合は、既得権保護政策のいわば極北であり、そもそも獣医学部の申請自体を認めないので、まさに「市場からの排除」である。

 効率化政策に代替するもう一つの政策が、厚生改善政策である。これは特定の人や集団の厚生増加に配慮することである。効率の増進は二の次で、ともかく「特定の人の厚生さえ上がればよし」とするやり口である。

 今回の森友問題は、近畿財務局の厚生改善政策によって土地利用の効率化が無視され、その結果、長期的には当事者の厚生水準も低下したことになる。ここでいう「当事者」は森友側であると同時に、また公有地の活用ができなかった国民の損失でもある。

 高橋氏の『「官僚とマスコミ」は嘘ばかり』(PHP新書)は、モリカケ問題を時系列で整理しながら理解するには最適の書である。他の類書は、「安倍ありき」「昭恵夫人ありき」みたいなバイアスが強くて使い物にならない。
財務省=2018年11月8日(飯田英男撮影)
財務省=2018年11月8日(飯田英男撮影)
 高橋氏の整理は単純な明解で、森友学園に売却した国有地は、過去にゴミの投棄場として知られていた。

 近畿財務局は土地のプロですから、きちんとした手続きをすべきでした。ゴミのことを十分に説明していなかった可能性があるうえに、入札ではなく随意契約にしたことなど、近畿財務局の事務手続きのミスです。