2018年12月17日 13:30 公開

イギリスのテリーザ・メイ首相は、欧州連合(EU)をめぐる国民投票を再度実施するべきだと主張する一部の下院議員に対し、「英国民の信頼を壊すもの」と警告する予定だ。

下院では今後、ブレグジット(イギリスのEU離脱)について離脱協定の採決が行われる予定だが、議員らの承認が得られなかった場合には新たなに国民投票を実施すべきだという声が挙がっている。この方針には保守党のジョン・メージャー氏や労働党のトニー・ブレア氏といった元首相陣も賛同している。

しかしメイ首相は17日の議会で、新たな国民投票は「我々の政治の一貫性に取り返しの付かない打撃を与える」とともに、「何処にも進めなくなる可能性が高い」と指摘する予定だ。

メイ首相は11日、自ら提出した離脱協定が下院を通過しない公算が高いと認め、下院での採決を延期した。

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ブレア元首相は先週、メイ氏の協定承認に対する決意のほどは尊敬すると述べつつ、多数の議員が反対する状況では「これ以上、深掘りしても文字通り意味がない」と話した。

ブレア氏は、30カ月におよぶ交渉の末、メイ政権が「混乱」に陥っている現状を見ると、他に選択肢がなければ国民に最後の選択権を与えるのが「論理的な」結論だと述べた。

しかしメイ首相は17日の議会で、「新たな国民投票を実施しようとして、英国民の信頼を壊すなどするべきではない」と演説する予定。

「国民投票をまた実施などすれば、我々の民主主義は成果を出さないのだと、民主主義を信じる数百万人に伝えることになる。そうすれば、私たちの政治の信頼性に取り返しの付かない打撃を与える」

「新たな国民投票をしても、前回と比べて私たちが前進することはおそらくない」

「さらに、国の団結のために努力すべきこの時に、またしても国民投票などすれば、国は今まで以上に分断されてしまう」

メイ氏は16日、ブレア氏が2度目の国民投票を支持したことは、首相経験者が首相の職を「侮辱した」ことに等しいと批判し、ブレグジット交渉の進展を損ないかねないと反発した。

メイ首相は先週末、欧州理事会でEU各国首脳と会談し、離脱協定が承認されるよう支援を要請した。

メイ首相は11日、離脱協定が反対多数で否決されるとの警告を受けて下院での採決を中止し、12日夕に保守党で動議された党首不信任投票を200対117の賛成多数で生き延び、その足でブリュッセル入りした。

英国内では、ブレグジット後にEUと通商協定が結ばれなかった場合に英国・北アイルランドとアイルランドの間に国境管理を敷かないための「バックストップ(防御策)」が論争を巻き起こしている。メイ首相はEU各国首脳との会談で、このバックストップに対する法的な確証を得たいと考えていた。

しかしEU側は離脱協定について、内容の明確化は可能だが「再交渉の余地はない」と述べた。

「成功の見込みなし」

メイ首相は14日、EU首脳との会談では離脱協定について「さらなる明確化と協議」が可能なことを示し、英政府は「下院議員が必要としているさらなる確証を得るため、これから数日の間に素早く働く」と述べていた。

しかし最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首は、この離脱協定は「成功の見込みがなく」、メイ首相は「意味ある変更点を何一つ持ち帰って来ることができなかった」と批判した。

労働党は、今週中に離脱協定の採決を行うよう求めている。一方、英政府は1月21日までに採決を行うとしている。

保守党所属でEU離脱派のリアム・フォックス国際貿易相は16日、BBCの番組に出演し、議員らの懸念が示された今、離脱協定が下院を通過する見込みは薄いと話した。

もし離脱協定が可決されない場合、党の政策にとらわれない自由採決を行うことなど「議会は別の案について決めなくてはならない」と示唆した。

16日にはイギリスの各紙が、政府内で特にメイ首相を支持する政権幹部2人が、離脱協定が否決された場合に新たな国民投票を画策していると報じた。

しかし、名指しされたギャヴィン・バーウェル官房長官と、実質的な副首相のデイヴィッド・リディングトン内閣府担当相は2人とも、報道内容を否定した。

バーウェル氏はツイッターで、「野党と一緒になって2度目の国民党票を計画している事実などないと、喜んで明確にしたい(そして次の質問にあらかじめ答えると、野党以外の誰とも計画していない)」と書いた。

(英語記事 New EU poll 'would break faith with people'