長谷川一男(肺がん患者の会「ワンステップ」代表)

 2020年東京オリンピック・パラリンピックに向け、受動喫煙の規制強化を目的とした法律が成立した。さらに、より厳しい東京都の条例もできた。単純に喫煙できない場所が増えることになる。

 今までは新聞やテレビの中で受動喫煙の法律が議論されていたが、大きな実効性をもって、私たちの生活の中に入り込んでいく。これでたばこに対する価値観は大きく変わっていくだろう。法律や条例施行後には調査が行われ、健康への影響も明らかになってくるはずだ。

 そんな中、ネット上などでは喫煙者を「ヤニカス」と呼ぶなど、誹謗中傷がエスカレートする現状があるようだ。喫煙者から「われわれが犯罪者であるかのような、さげすむ視線を世間から感じる」と言われたこともある。今回はそんな「喫煙ヘイト」について考えてみる。

 考えてみると書いては見たものの、結論は決まっている。誰かを非難しても、何もいいことが生まれない。それだけは分かっている。私自身、今まで幾度となく誰かを非難してきたからだ。

 私は講演の機会をいただくことがある。その時、「正しい」と思うことがあると、声高々に話し、「正しくない方」を非難することがある。

 先日、がん保険を扱う企業に講演を依頼された。常々、「先進医療」の扱いに不満を持っていたが、多くのがん保険は、重粒子線治療など300万円もする高額な先進医療を受けられるようになる、と謳(うた)う。ここには、ある前提がある。「値段の高いものは優れている」という考え方だ。

 値段の高い車は性能が良い。値段の高い家は地震に強いし、広い。値段の高い料理は良い食材を使い、腕の良い料理人が作り、味も良い、などなど。このことを疑問に思う人はいないだろう。
※写真はイメージ(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージ(ゲッティイメージズ)
 ところが、「医療」は異なる。日本において一番良い治療は、健康保険でカバーされて、「安く」「誰でもできる」ようになっている。高いお金を出すと特別な治療が受けられる、というのは大きな誤解だ。

 高いお金を出すと得られるのは個室代くらいで、治療自体は高額ではない。「先進医療」とは健康保険の適用が検討されている治療技術のことで、まだその効果が証明されておらず、健康保険ではカバーされていないだけだ。