2018年12月19日 14:08 公開

ドナルド・トランプ米大統領の元補佐官(国家安全保障問題担当)で、ロシアの米大統領選介入疑惑をめぐり米連邦捜査局(FBI)に虚偽の供述をした罪を認めたマイケル・フリン被告の公判が18日、コロンビア特別区(ワシントン)連邦地裁で開かれた。連邦地裁のエメット・サリヴァン判事は、FBIに偽証したフリン被告は国を売ったと非難した一方、予定されていた判決の言い渡しを延期した。

フリン被告はこの日、判決を言い渡される予定だったが、サリヴァン判事の手厳しい発言の後、弁護士が延期を要請した。

被告は2016年12月に当時の駐米ロシア大使と接触したことについてFBIに偽証したと、昨年12月に有罪を認めた

ロシア政府による米大統領選介入疑惑の捜査をめぐり、疑惑に直接関連して判決言い渡しを受けるのは、トランプ政権でフリン被告が初めてとなる見込み。

連邦地裁にフリン被告が出廷する数時間前、トランプ大統領は「今日の法廷で、マイケル・フリン将軍の幸運を祈る。彼にはとてつもないプレッシャーがかかっているだろうが、僕たちの政治運動でのロシア共謀について何を言うのか楽しみだ。我々の運動は偉大で、そしてもちろん、大成功した。共謀などなかった!」とツイートした。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/1074993036831191045


2016年米大統領選でトランプ氏を有利にするため、トランプ氏もしくはトランプ氏側近がロシアと共謀したとの疑惑について、米司法当局は捜査を進めている。トランプ大統領はたびたび、この捜査を厳しく批判している。

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法廷で起きたこと

フリン被告は判決を18日に言い渡される予定だったが、サリヴァン判事の厳しい発言を受け、被告側弁護団は判決言い渡しの延期を緊急で要請した。

サリヴァン判事は、判決言い渡しを来年3月13日に延期すると合意した。

公判に先立ち、ロシア疑惑の捜査を主導するロバート・ムラー特別検察官は、捜査への度重なる協力を理由に、フリン被告に実刑を求刑しない方針を明らかにしている。

この方針についてムラー特別検察官の事務所は、フリン被告による捜査への「相当な」協力と、軍での実績を理由に挙げた。

しかし、サリヴァン判事はフリン被告に対し、「これは非常に重大な罪だ」と指摘した。

「政府高官が、ホワイトハウス敷地内でFBIに虚偽の供述をしたのだ」

特別検察官事務所はフリン被告を国家反逆罪で訴追しようと考えたことがあるかと、サリヴァン判事が検察側に尋ねる場面もあった。

判事はフリン被告に対し、「あなたは自分の国を売ったのだと言える」と指摘し、フリン被告の罪に「嫌悪感と軽蔑の念を隠せない」と語った。

フリン被告は法廷で罪を再び認め、FBIの取り調べ当時、うそをつくのは犯罪と「認識していた」と述べた。

弁護団は先週、取り調べでの偽証は犯罪だとFBIの捜査員が明言したことは一度もなかったと主張した。また、弁護士の立会いを妨げたとも訴えた。

しかし法廷に提出した文書で検察側は、「FBIへの虚偽供述が犯罪だとことさら警告されなくても、取り調べで真実を語るのがいかに重要か分かっているはずだ」と反論した。

ホワイトハウスのサラ・サンダース報道官は18日、米フォックス・ニュースのインタビューで、「あらゆる標準的手続きの決まりごとを破った」FBの捜査員により、フリン被告が「わなにはめられた」と語った。

連邦地裁の外には、フリン被告に抗議する小規模団体が、大きなねずみの風船を持って集まった。ねずみは密告者の隠語として使われるアメリカのマフィア用語。一方、フリン被告を支持する集団もいた。

フリン元補佐官の罪状

米陸軍で中将に上り詰めた後に退役したフリン被告は、2016年12月当時のセルゲイ・キスリャク駐米大使との接触について、FBI捜査員に虚偽の供述をした。

司法取引の合意書面によると、フリン被告は2017年1月にFBIの取り調べで偽証した。ロシア政府に対するアメリカの制裁について、トランプ氏の大統領就任前にキスリャク氏と議論していたが、その内容についてうそをついたという。

イスラエル入植地に関する国連安保理決議の採決について、ロシアが採決を延期または決議案に反対するようキスリャク氏に要請したことについても、フリン被告は偽証した。

またフリン被告は、米大統領選の期間中、トルコ政府を擁護するロビー活動を展開し、報酬を違法に受け取った罪でも告発された。

ただし、トルコ政府の代理で違法なロビー活動をしたとしてフリン被告のビジネスパートナー2人が17日に起訴されたが、フリン被告自身はこの起訴対象から除外された。

検察は18日、この件でフリン被告も訴追される可能性があったが、捜査に「相当な協力」をしたため免れたと述べた。

ムラー特別検察官の捜査の関係

ロシアとの共謀疑惑に関する一連の捜査に加え、ムラー特別検察官は、トランプ氏自身もしくは側近が、フリン被告への捜査を妨げ司法妨害を狙ったのではないかとの疑惑も調べているとみられる。

ジェイムズ・コーミー前FBI長官は、「(捜査を)やめる、フリンを自由にするための道筋がはっきり見えるといい」とトランプ氏が求めてきたと、上院情報委員会に証言している

トランプ大統領はフリン被告の外国政府との違法な接触に対する捜査を終了させようとしたと思うと、コーミー氏は主張してきた。

一方で、そのような会話は一切コーミー氏と交わしていないと、トランプ氏は否定している。

コーミー氏は2017年5月、トランプ氏により電撃解任された。これを受け、ムラー氏が米司法省から特別検察官に任命された。


<解説>順風満帆とはいかず――アンソニー・ザーカー BBC北米担当記者

18日は、比較的順調にことが進むはずだった。マイケル・フリン被告が法廷に姿を見せ、ほとんど確実に、FBIへの偽証で実刑のない量刑言い渡しを受けるとみられていた。

特別検察官の事務所が裁判所に、実刑なしを勧めていた。ロシアの米大統領選介入疑惑をめぐる捜査に、フリン被告が大きな役割を果たしたためだ。そしてもちろん、フリン被告の弁護士も実刑なしを望んでいた。

ところが、エメット・サリヴァン判事の方針は違うことが分かった。法廷での厳しい裁判長発言からすると、フリン被告が多少の禁錮刑を受ける可能性は十分あるようだ。

フリン被告と弁護団が慌てるのも無理もなかった。フリン被告がさらにほかの形でも捜査協力できるかどうか検討したかもしれない。たとえば、トルコ政府の未登録代理人を務めたとして起訴された被告のビジネスパートナー2人について、これから始まる裁判に協力するなど。

これから数カ月、フリン被告と、被告が何をして何をしなかったか、何を知っていて何を知らないかをめぐり、さらなる推測や陰謀説が飛び交うのは間違いない。

少なくとも判事は、特別検察官の勧めに全面的に従うことにはこだわらないと、今回の決定で示された。この決定は、ロバート・ムラー特別検察官の捜査チームにとっても厄介な意味合いを乙可能性がある。せっかく検察官と司法取引をしても判決がその通りにならないのでは、今後他の被告を説得しにくくなるかもしれない。


(英語記事 Michael Flynn: Judge suggests ex-Trump aide 'sold out' US