しかし、経済が停滞し、繰延された負債を担う将来世代が減少していく現局面においては、状況が全く異なる。実際、財務省によれば、特例公債の発行から脱却することのできた1990年度以降歳出を原因とする債務残高の増加額416兆円のうち7割強の293兆円が社会保障を原因とするとされている。つまり、日本の財政問題は社会保障問題と言っても過言ではない。増加する一方の社会保障支出を賄うための収入増加策は不可避である。

*社会資本に相当する生産資産は非金融資産に分類され732兆円(うち防衛装備品9兆円)。それとは別に、地下資源、漁場、国有林等の非生産資産(自然資源)153兆円もある。

 しかし、社会保障を支えることが期待されている現役世代の弱体化が続いている。その背景としては、非正規雇用比率の上昇や賃金水準の高い雇用機会の喪失といった経済構造の変化がある。また、当初所得の低迷だけでなく、税制や社会保障制度の恩恵が薄い未婚者の増加等、世帯構造の変化も生じていることが挙げられる。

 こうした現役世代の苦境を前提に、政府・与党のみならず野党においても、子供の医療費無料化(窓口負担ゼロ)、最低賃金引上げ、18歳選挙権、待機児童解消策、給付型奨学金導入、幼児・高校・大学教育無償化など、高齢者とともに現役世代重視の全世代型社会保障の充実を目指している。

 このように現役世代が貧困化しつつあるからこそ全世代型社会保障が提案されているという事実に鑑みると、現役世代に負担させる従来の仕組みを維持するのには無理がある。「誰もが受益者」である全世代型社会保障を実現したいなら北欧諸国を例に挙げるまでもなく「誰もが負担者」でなければならない。
スーパーで商品を選ぶ買い物客。消費税率が10%となれば消費者や業者に大きな影響が懸念される=2018年10月、東京都大田区(齋藤有美撮影)
スーパーで商品を選ぶ買い物客。消費税率が10%となれば消費者や業者に大きな影響が懸念される=2018年10月、東京都大田区(齋藤有美撮影)
 したがって、全世代型社会保障の財源について、財政当局は、(1)現役世代が減少し、高齢世代が増加することから、特定世代に負担が集中せず、国民全体で広く負担する消費税が社会保障給付の財源にふさわしい、(2)所得税や法人税に比べ、消費税は景気変動に左右されにくく安定している、との理由から、財源を消費税により広く全世代に求める方針としている。

 しかし、消費税率の引上げは、税制抜本改革法によって引上げスケジュールが定められている。また、増収分の使途についても、社会保障制度改革プログラム法によって配分が定められているにもかかわらず、実際には、景気後退懸念を理由として、10%への引上げは、2017年4月、さらに2019年10月へと延期されるなど、政治、国民問わず、財政再建、消費増税への拒否反応が著しい。