仮にこの25%への関税引き上げが実現すると、米中の貿易摩擦は、実体経済に大きなマイナスインパクトを与え、世界中の市場を混乱に陥れることになりそうだ。

 米中の協議が決裂すれば、来年3月から米が関税を25%に引き上げる一方で、中国も自動車や大豆など米国からの輸入品に追加関税を課して報復、米中の貿易摩擦は、一段と深刻化する。これを機に、世界経済は本格的な減速へと向かうことは避けられないだろう。

 日経平均採用銘柄の2019年3月期決算の純利益の予想をみても、前年比、横ばい圏内で推移すると予測するアナリストが多い。順調に回復を続けていた日本企業の収益改善にも急ブレーキがかかりつつある。

 この収益改善が鈍化した背景には、いくつかの要因がある。

 中国経済が、循環的にピークアウトを迎え、設備投資に減速傾向が出ている。さらに、世界経済をけん引してきたiPhoneの生産が伸び悩み関連部品の生産にもダメージが広がるという観測が出ている。米連邦準備制度理事会の利上げで、新興国通貨が下落、アジア等で日本企業の円ベースの利益が減少していることも大きい。

 米中の貿易摩擦についても、米の鉄鋼、アルミニウムへの課税で自動車などの米国での現地生産のコストが上昇するなど、すでに影響が顕在化し始めている。
1日、ブエノスアイレスで会談に臨むトランプ米大統領(手前右)と習近平中国国家主席(同左)(ロイター=共同)
1日、ブエノスアイレスで会談に臨むトランプ米大統領(手前右)と習近平中国国家主席(同左)(ロイター=共同)
 「米が25%まで関税を引き上げれば、日経平均株価は現在の水準から3割から4割調整してもおかしくない」(外資系証券のエコノミスト)との見方も出ている。足元で、2万2000円~2万1000円程度で推移している日経平均株価(225種)は、1万5000円を割り込む水準まで下落する可能性すらあるというのだ。

 こうした経済危機のリスクを安倍首相と周辺は十分に織り込み、消費増税ストップのシナリオを多角的に描いているとみるのが自然だろう。

 安倍首相は10月15日の臨時閣議で2019年10月に消費税率を10%へ引き上げることを表明、内需の失速を避ける経済対策を指示し、「あらゆる施策を総動員する」と強調した。

 自動車関連税制の減免を拡充、住宅購入なども補助金でサポート。さらに中小店舗でクレジットカードなどのキャッシュレス決済をした消費者に期間限定で2%分のポイントを還元する方針だ。増税のダメージ対策を丁寧に準備する姿勢を示している。

 しかし、安倍首相は、これまで消費税増税などの方針を記者会見で説明してきたのに、今回は、閣議での発言を公表することだけにとどめた。これを将来、消費増税を止めるための一つの布石とみることもできるだろう。

 米中の貿易摩擦の激化に端を発した世界的な経済危機が起これば、安倍首相は迷わず、消費増税の延期を決断するだろう。その際には、消費増税の延期の是非を国民に問うという名目で、衆参同日選挙に打って出る可能性もある。経済危機の中で、国民がどのような審判を安倍政権に下すのかに注目が集まるだろう。