ところが、突如、その約半分の約2・4兆円を①・②・④に充当する方針に変更した。内訳は、①・②で約1・4兆円、④で約1兆円である。このほか、③の年金生活者支援給付金や65歳以上の介護保険料の軽減対象拡大等で約1兆円も要する。

 さらに今回の予算編成では、増税ショックの緩和に便乗する形で、⑤~⑬の増税対策が追加となった。政府は対策コストの詳細を公表しておらず、現時点では判断が不可能だが、当初計画で予定していた財政赤字の削減分、約4兆円を超えて、むしろ財政赤字が拡大している可能性もあると考えている。政治的な駆け引きもあり、今回の予算編成では、増税を悲願とする財務省は沈黙を貫く形となったが、これでは何のための増税なのか理解できない。

 例えば、19年度当初予算では、⑪のポイント還元の財源として約3千億円を見積もっているが、還元コストが本当に3千億円で済むのか、筆者は疑念を持つ。また、そもそも、低所得者への支援として、⑤や⑥の対策を追加で実行するならば、当初から多くの経済学が指摘していた通り、高所得層も恩恵を受ける④の「軽減税率」は導入せず、低所得層に集中投下する「給付付き税額控除」を導入する方が望ましい。

 また、⑦や⑩の対策は筆者も必要に思うが、⑧・⑨・⑪~⑬の対策は増税対策とは直接関係ないものではないか。むしろ、これらの対策の中には増税ショックを増幅するリスクがあるものも存在する。

 全てについて考察はできないため、以下では、⑪の「キャッシュレス決済でのポイント還元」について簡単に考察してみよう。

 まず、キャッシュレス決済は、第4次産業革命の鍵を握るエンジンの一つで、ビッグデータなどの利活用に向けた成長戦略とも深く関係する。だが、現金信仰の強い日本ではなかなか進まない。

 実際、経産省の資料「キャッシュレスの現状と推進」(17年8月)によると、民間最終消費支出に占めるキャッシュレス決済額の割合は、08年の約12%から、16年で20%にまで増加したが、米国や中国、韓国と比較すると、その半分以下の利用しかない。例えば、15年では、米国が41%、中国が55%、韓国が54%も決済で利用しているが、日本は18%しかない。早急な対策が必要だ。
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
※写真はイメージです(ゲッティイメージズ)
 このため、当初、政府は次のような方向性で対策の検討を進めていた。具体的には、1)大企業以外の小売店で現金を使わないキャッシュレス決済をした場合、1年間という期限付きで、2%の増税分をポイントとして還元する。2)ポイント還元の対象としては、クレジットやデビットカードのほか、電子マネーやQRコードでの決済も含める、というものだ。

 ポイント還元策はキャッシュレス決済を促進させる起爆剤となる可能性があり、筆者もその政策的意義は理解していたつもりである。だが、11月22日に安倍首相がキャッシュレス決済で5%のポイント還元の検討を表明したことから、状況が一変した。