さらに、GPファイナルのフリーでは、演技中にミスしたジャンプを、残りのプログラム内で挽回した。演技中のとっさの判断を実際の演技で見せることができたのは、そこまでに既に「ミスしたときにはどうするか」と想定して練習していたからこそだ。そうした準備も怠らずに試合を迎えていたのである。

 身体能力の高さも際立っている。幼稚園のころに片手で側転ができ、8段の跳び箱が跳べたという紀平。筋肉がつきやすい体質で、「筋トレ前と筋トレ後に体重計に乗って、体脂肪率がどれくらい変化したのか見るのが好きです」と、国内外の移動時にも、大きめの体重計を持ち運んでいるという。

 とはいえ、身体能力の高い選手が、筋トレをすればトリプルアクセルが跳べるというものではない。トリプルアクセルを練習で初めて跳べるまで、そして、それを試合で何度も失敗して悔しい思いをし、練習を繰り返して試合で安定して決められるものにしたのは、紀平自身の努力の賜物(たまもの)だ。

 「ジャンプは腕で跳ぶ」と言われるほど、踏み切るときに右腕を強く振るのだが、トリプルアクセルを何度も練習してきた彼女は、「そのために肩幅が広くなってきたし、右腕の方が、力こぶがいい感じになってきています」と話していた。また、今年の春に2年ぶりにイタリアのスケート靴メーカーに足型の採寸に行ったところ、「多分トリプルアクセルでぎゅっと踏み込むから」足の横幅が広くなっていたという。

 さらに、前述したように左足の靴の方が新調するスピードが速いのは、トリプルアクセルは左足で踏み切るために左足に力を強くかけるからだという。それほどにトリプルアクセルの練習を重ねてきたことが、今季の彼女の躍進の陰にはあるのだ。

フィギュアGPファイナルの公式練習から
引き揚げる紀平梨花(右)と宮原知子=2018年12月、バンクーバー(共同)
 それに、同じクラブで一緒に練習している平昌五輪4位、宮原知子の存在も大きい。「知子ちゃんは努力家で、少しずつ上達している姿を凄いなと思っています」と、努力することの大切さを肌で感じてきた。

 今季の活躍は全て、スケートに懸けてきた彼女の努力の結実といえるだろう。そしてもう一つ、「たくさんの人たちから応援していただいているのだから、勝つしかない。こんなに時間をかけてスケートに人生を懸けてきたからには、もうこの道は変えられない。スケートで絶対頑張るぞ、という気持ちです」と、スケートに取り組んでいることも重要だ。

 「シニアデビュー」というスケート人生の中の一つの特別なシーズンを、ポジティブに過ごしていること、こうした気持ちの持ち方も、紀平の強さの一番の要因だろう。