谷本真由美(コンサルタント兼著述家)

 師走の寒い中皆さまいかがお過ごしでしょうか? ワタクシは義父が危篤のため、イギリス北部炭鉱地帯出身の家人の親戚やら地元民からかかってくる電話の、英語のズーズー弁の解読に難儀しております。義父は脳梗塞で入院した翌日にステーキを食わされるという容赦ない対応を目の当たりにし、イギリス国立病院が医療費削減にまい進しているさまを体感しております。

 さて話は変わりますが、12月2日に放送された漫才日本一を決める『M-1グランプリ2018』で審査員を務めた上方漫才の大御所、上沼恵美子さんに対して、お笑いコンビ「とろサーモン」の久保田かずのぶらが暴言を吐いた件がプチ炎上しておりましたね。

 M-1放送後に撮影した動画で、久保田氏は「酔ってるからっていうのを理由に言いますけど、そろそろもう辞めて下さい。審査員の方も1回劇場出てください。自分目線の、自分の感情だけで審査せんといてください。1点で人の一生変わるんで。理解して下さい。たぶんお笑いマニアの人は分かってますわ。お前だよ、一番、お前だよ。分かんだろ、右側のな」と発言しました。

 そして、「スーパーマラドーナ」の武智正剛氏も「嫌いですって言われたら、更年期障害かと思いますね」と発言しております。

 この発言に対して、上沼さんは9日の番組で「それとお二人のことは全くなんにも思っておりません。暴言だなんだて言ってますけども、全然結構です」と述べた上で、「悪いですけど興味ないです」と発言し、熟練した大人の対応をしておられました。

 久保田と武智両氏の発言は、あまりにも尊敬を欠いた、女性をバカにしたような発言なのではないか、という批判が集まりました。「女性は感情的だから」との決めつけ、更年期障害への無理解など、炎上ポイント満載ですから、当たり前ではありますが。
2018年12月8日、番組の収録を終え、読売テレビを出る上沼恵美子(門井聡撮影)
2018年12月8日、番組の収録を終え、読売テレビを出る上沼恵美子(門井聡撮影)
 さて、今回の騒動は炎上案件としては比較的小さいものであって、あまり面白いものではないのですが、それでもちょっとは考えることがありました。

 まず第一に、私は久保田氏と武智氏は、お笑い芸人として全然面白いとは思いません。

 そもそも他の芸人や先輩方に厳しく批判されたとしても、それをネタとして生業(なりわい)にするのが、芸人というものであります。作家や漫画、歌手と同じく、自らにかかる全ての事柄をネタにして、銭にしてナンボ。自分への批判どころか、身内の借金、DV(ドメスティック・バイオレンス)、葬式、脱腸…何でもござれで、そこで他人(ひと)さまから笑いを取るというのがプロでございましょう。

 他人さまは、それこそ人の不幸や悲惨さが大好きでございます。先輩に批判され、「お前はクズだ!」と言われているさまは、同情するポイントではなく、「ああ、俺よりひどいやつがいてよかった」と安堵(あんど)し、ゲラゲラと笑うネタであって、むしろ芸人としては「いいネタになった」と先輩方に感謝しなければならないのです。

 これが、コンテンツを売って銭を投げていただき、飯を食っていく人間の運命であるのです。それは芸人だけでなく、作家や歌手、漫画家、経営コンサルタントといった職業もみな同じです。

 何とか賞を取ったとか、何々のすごい大学を出ている、試験の点数が高い、勲章をもらった、そんなことは箔付けところが、自らの格下げとなるお恥ずかしいことに過ぎません。言葉は悪いですが、そんなものをもらいたいと思っている根性がある時点で「芸人失格」でございます。