竹元正美(元東宮侍従、国際文化教育協会理事長)

 来年4月30日に天皇陛下が退位され、翌日5月1日に新天皇が即位されることになりました。これに伴い、退位及び即位に係るさまざまな行事が行われます。

 退位礼正殿の儀、剣璽(けんじ)等承継の儀、即位礼正殿の儀などは国事行為として行われますが、大嘗祭(だいじょうさい)は宗教的色彩を有するとの観点から、国事行為としてではなく皇室の公的行事として行われます。そしてその費用は、皇室の公的な活動に充てられる公金である宮廷費から支出されることに決定しています。

 他方、毎年、皇室の行事として宮中祭祀(さいし)が行われており、この祭祀のうち、最も重要な祭祀が新嘗祭(にいなめさい)といわれ、毎年11月23日に行われております。大嘗祭は、新天皇が即位したときに新嘗祭の規模を大きくした形で一世に一度挙行されるものです。

 新嘗祭を含む宮中祭祀は、宗教的色彩を有するため、皇室の私的行事として行われます。そのため、その費用は、憲法の政教分離の原則から天皇および皇太子ご一家の日常の費用に充てられる内廷費から支出されております。大嘗祭も新嘗祭と同様の性格を有することから、その費用は内廷費から支出することが論理的に整合性を有するものと考えられます。

 しかし、政府としては「大嘗祭については、皇位が世襲であることに伴う、一世に一度の極めて重要な伝統的皇位継承儀式であるから、その儀式について国としても深い関心を持ち、その挙行を可能にする手だてを講ずることは当然であり、その意味において、大嘗祭は公的性格があり、その費用を宮廷費から支出する」との立場であります。

 実際、今上天皇の大嘗祭においてもこのような立場から、その費用は、公金である宮廷費から支出されました。来年の大嘗祭においては、前回の例を踏襲することにしております。つまり、大嘗祭は、宗教的色彩を有するものの、公的性格があることから皇室の公的行事としてとり行うとの説明がなされております。
宮内庁の山本信一郎長官=2017年9月3日午前、宮内庁(撮影・松本健吾)
宮内庁の山本信一郎長官=2017年9月3日午前、宮内庁(撮影・松本健吾)
 大嘗祭については、旧皇室典範において「即位の礼および大嘗祭は京都において行う」と規定されていましたが、現行の皇室典範においては「皇位の継承があったときは、即位の礼を行う」との規定になり、大嘗祭を行うとの規定がなくなりました。

 このような状況のもと、大嘗祭を行う必要はないという意見もあれば、大嘗祭を国事行為として行うべきであるとする意見まで存在しております。政府としては、総合的に判断して「皇室の公的行事」として、その費用は、公金である宮廷費から支出するとの結論に至ったものと考えられます。