小田部雄次(静岡福祉大名誉教授)

 秋篠宮さまの53歳の誕生日の記者会見は、多くの国民の注目を集めた。中でも、既に政府が決定した大嘗祭(だいじょうさい)の国費支出に対して疑問を呈した発言への関心は高い。

 大嘗祭が宮中祭祀(さいし)であることは政府も認めており、平成の即位後において、宮中祭祀ではあるが代替わり直後の大きな儀式であるからという理由で、国費支出で対応したいきさつがあった。本来、宮中祭祀は政教分離の原則に対応するために内廷費で賄っており、大嘗祭だけに国費を充てることは、確かに説明が不十分なままでの「見切り発車」である。

 今回もより深い議論もなく、これを踏襲すると決定したのはいささか強引にも見えた。そのため、大嘗祭の国費支出をめぐる秋篠宮さまの「戸惑い」に一定の理解を示している識者も多い。

 問題は、そうした発言を記者会見という場で、皇室に最も身近な立場にいる宮内庁の山本信一郎長官に対し「聞く耳を持たなかった」と述べたことにあろう。直後、山本長官も「ちょっとつらいが、そう受け止められたのであれば申し訳ない」と、突然の「お叱り」に動揺した。

 また、日を置いて、宮内庁の西村泰彦次長も「大変申し訳なく感じています」と詫びた。その後、秋篠宮さまも言葉が過ぎたと語ったと伝えられる。宮さまと宮内庁とのこうしたやりとりは、国民の多くに、宮さまと宮内庁の間の意思疎通はどうなっているのだろうかとの疑念を抱かせた。
2018年11月29日、水産功績者表彰式後、記念のパーティーに出席された秋篠宮さま
2018年11月29日、水産功績者表彰式後、記念のパーティーに出席された秋篠宮さま
 秋篠宮さまと山本長官との間で、日ごろからさまざまな事柄についての会話が全くなかったわけではないだろう。会話はあったが、その会話は、秋篠宮さまと山本長官が、お互いの話を公的な場の公的発言として、受け止め合うことができなかったのだろう。

 そもそも、宮内庁長官が皇族の発言を公的に受け止めて、それを政府に伝え、その内容を吟味して、妥当性があれば、具体的な対応を進めるというシステムは、現在の皇室にはない。かつて、昭和天皇の時代には、天皇の私的な相談に応じる参与的存在がいた。彼らは宮内庁幹部や政府要人との間のとりつなぎ役として、皇室が抱える問題などを円滑かつ合法的に処理する機能を果たしていた。