2018年12月27日 11:01 公開

ゾーイ・クラインマン、BBCニュース・テクノロジー記者

スマートフォンを使う人の多くが、端末を見て過ごす時間が長すぎるのではと不安になっている。

グーグルによると、同社が話を聞いたアンドロイド・ユーザーの約70%が、スマホを「もっとバランスよく」利用する方法を見つけたいと答えたそうだ。

しかしこれにより、テクノロジー業界は気まずい立場に立たされる。顧客が携帯電話と距離を置くのを、業界として支援するなど。テクノロジー企業のビジネスモデルは往々にして、顧客がまさにその逆を、つまり端末をたくさん使うことに依存しているというのに。

アップルとグーグルは今年、それぞれ「スクリーンタイム」と「デジタルウェルビーイング」というデジタルツールを発表した。ユーザーがさまざまなアプリにどれだけ時間を費やし、どれほど頻繁に携帯機器を手にしているかを確認できるものだ。

アンドロイドの場合、この機能はオペレーティング・システム(OS)「アンドロイド・パイ」を搭載しているごく一握りの携帯電話ブランドでしか使えない。そのため、これが使えるアンドロイド・ユーザーはまだ多くない。

すでに見てみたユーザーにとって、このツールの結果はなかなかショッキングだったりする。

アンドロイドのデジタルウェルビーイングを初めて使ってみた日、私は携帯電話を200回ロック解除し、携帯電話で3時間以上使っていた。BBCの報道編集室での長時間勤務と母親業をこなしながら。メッセージ・アプリ「ワッツアップ」でのチャットやインスタグラムの猫写真ばかり見ていたわけではないと思うが、それでも私はゾッとしてしまった。控えめに言っても。

ロンドンに住むグーグルのエンジニア、ローズ・ラ・プレリー氏は、このツールの開発チームに所属していた。

ラ・プレリー氏によると、初めてデータを突き付けられた時、ユーザーが「罪悪感を抱いたり、恥ずかしいと感じる」かもしれないと、グーグルは十分承知していたという。そのため、利用者を批判するようなインターフェースにならないよう設計するのが非常に重要だった。

「たとえば、赤や緑の大きな矢印を使わない、何が良くて何が悪いのかの判断や評価を下そうとしたりしないなどです」

「結局のところ、色々な意見を聞くと個人差が大きいので、私にとって良いことでも、他の人には良くないかもしれない」

ほとんどの人がこの機能を使って自己管理できるはずだと、ラ・プレリー氏は考えている。

「データを見るだけで十分という人もいるでしょう。自分の時間をどう使ったか、携帯電話で何をしたか、思い出させてくれます」

「もう少し強い注意喚起が必要な人も、中にはいます。私もそのタイプです」

そうした人たちのために、ダッシュボードでは通知をミュートにしたり、特定の時間(例えば就寝時間)になると画面が白黒になるようにしたり、あるアプリで一定の時間以上を過ごしたらアラームが鳴るようにしたり設定できる。

しかし、ユーザーが携帯電話を使わなくなるのは、グーグルのためにはならないのでは?

「良い経験をしてもらいたい」

ハードウエアに焦点を当てたアップルのビジネスモデルとは異なり、グーグルは広告中心だ。つまり、なるべくたくさんの目玉に携帯電話の画面を見てもらう必要がある。

「ユーザーが確実に良い経験をすること。それが私たちにとって本当に大事なことだと思っています」とラ・プレリー氏は話す。

「みんな、どうやったら端末の使い方を変えられるか知りたがっていて、私たちはぜひともそのお手伝いがしたいです」

ラ・プレリー氏は決して、「電話のスイッチを切りましょう」とは言わない。これは大きなポイントだ。

この問題に対する携帯電話業界の反応は、まぁ、興味深いと言える。中には、私たちユーザーをスマホの大画面から引き離すには……スマホの画面を小さくすればいいという企業もある。

フィンランドの携帯電話会社HMDグローバルの携帯電話ノキアや、小型の「パーム」といった端末は、通常のスマホと一緒に使う「コンパニオン端末」として売り出されている。ノキアの場合は機能が少なめ、パームの場合は単にサイズが小さめになっており、メインのスマホから距離を取れるというわけだ。

「業界は明らかに今でも、携帯電話を売り続けたいと考えている」。モバイルやワイヤレス部門の情報を発信している「CCSインサイト」のアナリスト、ベン・ウッド氏はこう言う。

「(大きなスマホと)同じことをするために小型スマホを売ろうとしているのは、いささか皮肉な話です」

究極的には、これは意志の問題だとウッド氏は言う。

「色々な種類の機器をいくら持っていたとしても、携帯電話でどれだけ時間を使いたいかは、結局はその人次第です」

キャサリン・プライス氏は出産後、赤ちゃんが自分を見ている間、自分は携帯電話を見ていたと気づき、著書「How To Break Up With Your Phone」(携帯電話と別れるには)を書いた。

「人間同士の関係はこういうものなんだと、娘に思って欲しくないと気づきました。でも同時に、自分自身の生き方としても嫌だったんです」とプライスさんは言う。

「携帯電話と別れるというのは、携帯電話を捨てたり手放したりするという意味ではありません。ただ単に、自分にとって確かに有益な関係を作るために、一歩引いてみるという意味です。携帯電話と友達になるのです」

プライス氏は、携帯電話との「友情」を取り戻す30日計画を著書の中で挙げている。主なアドバイスは以下の通り――。

  • 切ってもいい通知は全て切りましょう。本当に必要なものだけにします。私の場合は、電話とテキスト・メッセージ。これらは現実の人間が、特にその瞬間に、私に連絡しようとしているから。あとはカレンダーと地図です
  • ホーム画面をアレンジし直し、実用的なアプリだけを置くようにします。電子メールやソーシャルメディア、ニュース、出会い系、ゲームなど、ついつい気になる、誘惑されそうなアプリはホーム画面には置かない。こうしたアプリはフォルダに入れて別のページに置くことでアイコンが見えなくなり、わざわざ意識しないと開けなくなります
  • 携帯電話は寝室の外に置きましょう。ベッド脇のテーブルには、電話に代わる何かを置くように。たとえば……本とか。電話を取ろうと手を伸ばすと、代わりに本を手に取るにようなります
  • 目覚まし時計を手に入れましょう。携帯電話を目覚ましに使うと、朝一番にやり取りするのは間違いなく携帯電話になってしまいます
  • グーグルのブラウザ「クローム」には、フェイスブックで自分の投稿が何回「いいね」されたかを教えてくれる「Facebook Demetricator」という拡張機能があります。それでも、自分の投稿に誰がいいねをくれたか確認しにフェイスブックに行ってもいいのですが、この拡張機能があれば、17個のいいねが20、25、30となるのを衝動的に確認しにいく習慣を手放す助けになります

私は……自分がいかにしょっちゅう携帯を手にしているか目にしたショックからは立ち直った。しかし私は変わったのか?

「罪悪感」

今でも私は、気づくと携帯電話を見ている。例えば天気予報を見ようと携帯を手にしたのに、10分後にふと気づくと、傘が必要かどうかはさっぱり分からないまま、SNSを見ているのだ。

とは言え、私は純粋に仕事で、道案内として、そして子供たちの学校からの絶え間ない連絡事項に追いつくために、携帯電話をたくさん使う。なので、スマホで有益に過ごした時間と無駄に過ごした時間を区別できるようになりたいと、ラ・プレリー氏に伝えた。

どうやら、そう思うのは私だけではないらしい。

「端末の使用について私たちは、意図する使用と意図しない使用を分けて考えています。使うつもりではなかったのに端末を使ってしまったことを、多くの人はとても気にします。罪悪感につながるので」とラ・プレリー氏は話す。

「この問題を解消できるバージョンができれば、最高です。意図的な使用と意図的でない使用を区別できるようになれば」

ということは、2019年は携帯電話とお別れする年になるのだろうか? アナリストのウッド氏は首をかしげる。

「2019年は、自分が携帯電話でどれだけ時間を使っているか、自覚が高まる年になるとは思います」

「でも携帯電話と別れる? それはかなりの無理難題ですね」

(英語記事 Are you ready to break up with your phone?