門傳義文(ラインズマン代表取締役)

 「やっぱり不動産屋はぼったくり?」。こんな声が聞こえてきそうな問題が平成最後の師走に起きました。

 12月16日、札幌市豊平区の不動産仲介「アパマンショップ平岸駅前店」で爆発事故が発生しました。負傷も多数出ましたが、隣接する居酒屋や周囲の建物のガラスが割れるなど、火元から数百メートル離れたところでも被害が確認された爆発事故となりました。第一報を聞く限り、きっと多くの人が居酒屋内のガスボンベが爆発の原因だと思ったことでしょう。しかし、捜査当局や消防当局のその後の調べで、原因はアパマンショップ社員が大量の消臭剤スプレー缶を処分中に起きた爆発事故だったことが明らかになりました。この報道がきっかけとなり、今度は賃貸物件仲介業者のずさんな実態に批判の声が上がりました。

 かくいう筆者も不動産を扱う仕事をしているのですが、不動産関係者が集まった忘年会では、この話題で持ち切りになったことは言うまでもありません。そこで本稿では、今回の爆発事故を機に不動産業者からの目線で、あまり知られていない賃貸物件仲介の実態や問題点などを解説していきたいと思います。

 まず、大爆発を引き起こすほどの消臭剤がなぜ不動産屋にあったのか。ここが最も疑問に感じた部分でしょう。そもそも、賃貸物件の契約時の付帯商品には「消臭代」というものがあります。要は、入居前に行う消臭や除菌、抗菌にかかる作業工賃のことです。

 不動産の募集要項では以下のように、備考欄に小さく記載されています。ただし、これはすべての賃貸物件に付いているわけではありません。後述しますが、一部の賃貸物件だけです。
 この消臭代は、借主がリクエストするものだと思う人もいるでしょうが、実際には半ば強制的に抱き合わせとして販売されるケースがほとんどです。

 不動産賃貸の契約における「抱き合わせ商法」は、本来NGなのですが、グレーゾーンとして一部の不動産業者では慣例化しているのが実態です。この抱き合わせ商品の在庫こそ、件の爆発事故が起きた店舗に大量の消臭剤があった理由だと思われます。

 では、東京都内ではどのくらいの物件に消臭代の抱き合わせ物件があるのでしょうか。私たちが活動するエリアで調査したところ、対象になっていたのは以下の地域でした。新宿、目黒、世田谷、渋谷、中野、杉並、豊島、板橋、練馬の9区です。
 上記の表が示す通り、募集物件の約3%で消臭代が付いているのが実態です。これは、賃料が安い物件のほか、敷金や礼金が無しの場合に多い傾向があります。不動産賃貸業の主な売り上げには、管理費や仲介手数料、リフォーム関連、アパート建築、付帯商品(保険など)があります。

 もちろん、各不動産業者の営業スタイルによって内訳もさまざまです。今回、問題となったアパマンショップは、運営会社が「アパマンショップリーシング北海道」で、名前に「リーシング」も付いていることから、入居者あっせんによる仲介手数料が主な売り上げだったと考えられます。

 賃貸の仲介手数料というのは、成約時に賃料の1カ月分というのが一般的です。なぜなら、ルールである宅地建物取引業法(宅建業法)では、借主もしくは貸主からそれぞれ賃料の0・5カ月分以内が原則ですが、依頼者の承諾があれば、1カ月分を上限に借主、貸主のどちらか一方からも受け取れると定めています。ゆえに、借主から1カ月分というのが慣例となっています。

 実は、この仲介手数料の上限が賃料の1カ月分という決まりが、不動産賃貸業を難しくしている一面でもあります。同じ仲介の仕事であっても、賃料の1カ月分という不条理な実態があり、これが今回の問題の大本(おおもと)になっていると考えられます。

 爆発事故が起きたアパマンショップのエリアでは、一室10帖(じょう)の賃貸マンションの家賃相場が約4万円だったそうです。東京都内で同じスペックの物件となると、10万円前後の家賃になりますから、仲介業者が同じ仕事をしても1回の契約当たり6万円程度の差が出てしまうことになります。